※2026年10月時点の情報です。
空き家の「買取」は、不動産会社に直接買ってもらう売り方です。この記事では、買主を探す「仲介」との違い、買取価格の目安の読み方、買取業者の免許と処分歴の調べ方、契約前に確かめることを、国土交通省・国民生活センター・法令の原文と、出どころを明記した民間の解説で整理します。
結論:空き家を買取で売る前に、何を押さえればいい?
買取は、価格が仲介より低くなりやすい代わりに、早く現金化しやすく、引き渡し後の責任を軽くしやすい売り方です。判断の材料は次の5つです。
- 価格:買取価格の目安は、東急リバブルの解説では市場価格の7〜9割程度、アットホームの解説(空き家)では相場の6〜8割程度、HOME4U(NTTデータ・ウィズ)の解説では相場の5〜8割です。いずれも民間企業の解説で、公的機関の数字ではありません
- 期間:東急リバブルの解説では、条件が合えば1週間から1か月程度で現金化できる場合もあるとしています
- 責任:東急リバブルの解説では、買取は契約不適合責任が免責となるケースが多いとしています。ただし、知りながら告げなかった不具合は、免責の特約があっても責任を免れません(民法第572条)
- 業者の確認:宅建業の免許は国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で、行政処分の履歴(最近5年分)は「ネガティブ情報等検索サイト」で確かめられます
- クーリング・オフ:国民生活センターは、自宅を不動産業者に売却した場合、クーリング・オフはできないと注意を呼びかけています
相続登記・税金・特例の期限を含む売却全体の流れは、相続した実家を売る流れと税金で解説しています。
この記事の目次
空き家買取とは?仲介と比べて何が違う?
この章のポイント
- 買取は不動産会社が買主になる売り方
- 免責の特約があっても、知っていて告げない不具合は責任が残る
- 自宅を業者に売る契約にクーリング・オフはない
仲介は、不動産会社に買主を探してもらう方法です。買取は、不動産会社そのものに買ってもらう方法です。下の比較のうち、価格・期間・手数料・責任・内覧は、東急リバブルの解説(2025年9月26日更新)の記載によります。
買主
- 仲介:個人など一般の買主
- 買取:不動産会社
価格
- 仲介:市場の相場で買主を探す
- 買取:東急リバブルの解説では、市場価格の7〜9割程度が一般的で、仲介よりも低くなる傾向がある(ほかの出典の目安は次の章)
売れるまでの期間
- 仲介:物件の条件や市況によっては、数か月以上かかることもある
- 買取:条件が合えば1週間から1か月程度で現金化できる場合もある
仲介手数料
- 仲介:売買契約が成立すると支払う(上限は国土交通省の告示で決まっている)
- 買取:不動産会社との直接取引のため、仲介手数料はかからない
契約不適合責任(引き渡し後に見つかった不具合などの責任)
- 仲介:売主が負う可能性がある
- 買取:免責となるケースが多い(東急リバブルの解説)
内覧
- 仲介:購入希望者の内覧がある(調整は不動産会社が代行する)
- 買取:購入希望者の内覧対応が不要な場合が多い(東急リバブルの解説)
クーリング・オフ
- 自宅を不動産業者に売却した場合はできない(国民生活センター)
仲介手数料の上限や、相続した家を売るときの手続きの順番は、相続した実家を売る流れと税金で整理しています。この記事では、買取を選ぶときに特に確かめたい点を詳しく見ていきます。
契約不適合責任とは?買取ではどう扱われる?
契約不適合責任とは、引き渡した建物が種類や品質の点で契約の内容に合っていなかったときに、売主が負う責任です。民法では、買主は修補などの追完を請求でき(第562条)、相当の期間を定めて追完を求め、その期間内に追完がなければ代金の減額を請求できます(第563条)。損害賠償や契約の解除も妨げられません(第564条)。
買主が不適合を知った時から1年以内に売主へ通知しないと、原則としてこれらの請求はできなくなります(第566条。売主が引渡しの時に不適合を知っていた場合などを除く)。
宅地建物取引業法第40条は、宅建業者が自ら売主となる場合に、この責任について買主に不利な特約を制限しています。売主が個人の場合、宅建業者は買主の側になり、第40条の制限はかかりません。東急リバブルの解説では、買取は契約不適合責任が免責となるケースが多いとしています。
ここに注意
民法第572条では、売主が責任を負わない旨の特約をしたときでも、「知りながら告げなかった事実」については、その責任を免れることができないとされています。
雨漏りの跡やシロアリの被害など、知っている不具合は査定の段階で伝え、書面に残しておきます。国民生活センターの注意喚起では、売却後に住宅のシロアリ駆除費用の負担を求められた相談も挙げられています。「免責」と口頭で言われただけで済ませず、契約書の条文で範囲を確かめてください。
買取ではクーリング・オフが使えない
宅地建物取引業法のクーリング・オフ(第37条の2)は、「宅地建物取引業者が自ら売主となる宅地又は建物の売買契約」が対象です。不動産会社が買主になる買取は、この形に当たりません。
国民生活センターも、「消費者が所有する自宅を不動産業者に売却した場合、クーリング・オフはできません。」と注意を呼びかけています(2021年6月24日公表)。契約書に署名する前が、立ち止まれる最後の機会と考えてください。
契約不適合責任の特約や契約の効力について迷う場合、最終的な判断は宅地建物取引士・弁護士などに相談してください。
買取価格は市場価格の何割?出典ごとの目安と手取りの比べ方
この章のポイント
- 買取価格の目安は出典ごとに5〜9割と幅がある
- いずれも民間企業の解説。自分の家にそのまま当てはめない
- 売値ではなく、手数料などを引いた手取りで比べる
出典ごとの「買取価格の目安」
買取価格が市場価格(相場)の何割になるかは、公的機関の数字ではなく、不動産会社やポータルサイトの解説で示されています。今回確かめた3社の記載は次のとおりです(2026年10月27日確認)。
東急リバブル「不動産の仲介と買取の違いとは?」(2025年9月26日更新)
市場価格の7〜9割程度が一般的
対象:不動産全般
アットホーム「空き家売却の方法は?」(2024年12月16日更新)
相場の6〜8割程度
対象:空き家
HOME4U(NTTデータ・ウィズ)「不動産買取のデメリットは3つ!」(2026年8月5日更新)
相場の5〜8割
対象:不動産全般。同じページでは「相場の5~8割で査定されるのが一般的」としている
物件の状態や立地、市況、会社ごとの再販の方針で価格は変わるため、どの割合も、自分の空き家にそのまま当てはめることはできません。査定を受けて、その金額の根拠を確かめることが出発点になります。
買取価格が仲介より低くなるのはなぜ?
東急リバブルの解説では、不動産会社がリフォーム費用や再販売するまでのリスク、自社の利益などを考慮して買取価格を算出することが主な理由だとしています。
残置物(家財)の撤去や解体、測量を業者が引き受ける条件の場合、その作業が価格にどう反映されているかは会社によって違います。査定書で、価格に含まれる作業と、売主の負担として残る作業を分けて確かめてください。
価格ではなく「手取り」で比べる
買取と仲介は、売値だけでなく、差し引かれる費用まで含めて比べます。市場価格1,000万円の空き家を例に、計算の考え方を示します。買取価格は、東急リバブルの解説の「7〜9割程度」の下限の7割(700万円)と仮定しています。
仲介手数料(上限)
- 仲介で1,000万円で売れた場合:39.6万円(200万円×5.5%+200万円×4.4%+600万円×3.3%で計算)
- 買取で700万円の場合:0円
売買契約書の印紙税(売主が保存する1通分と仮定)
- 仲介で1,000万円の場合:5千円
- 買取で700万円の場合:5千円
- どちらも契約金額500万円超1,000万円以下の軽減後の税額(国税庁 No.7108)
売れるまでの固定資産税・管理の負担
- 仲介:売れるまで続く
- 買取:引き渡しまでの期間が短ければ、その分少なくなる
計算上の差引額
- 仲介:約959.9万円
- 買取:約699.5万円
- 仲介手数料の上限は、国土交通省の告示で、売買代金(消費税を含まない額)のうち200万円以下の部分は5.5%、200万円を超え400万円以下の部分は4.4%、400万円を超える部分は3.3%です(不動産会社が消費税の課税事業者の場合。消費税を含んだ率)。
- 2024年7月1日からは、代金が800万円以下の「低廉な空家等」について、不動産会社が通常の上限を超えて、33万円(30万円の1.1倍)まで依頼者から報酬を受け取れる特例があります。国土交通省の資料では、媒介契約を結ぶ際にあらかじめ、その範囲内で報酬額を依頼者に説明し、合意する必要があるとしています。
- たとえば代金500万円の場合、通常の計算による上限は23.1万円(200万円×5.5%+200万円×4.4%+100万円×3.3%)ですが、特例により33万円まで受け取れる場合があります。この特例は手数料を安くするものではなく、価格の低い空き家では、仲介で売ると手数料が通常の計算より増える場合があります。
- 印紙税の軽減措置は、2027年(令和9年)3月31日までに作成される契約書が対象です(国税庁 No.7108、令和8年4月1日現在法令等)。
- 住宅ローンの抵当権の抹消、残置物の撤去、測量などの費用は物件によって加わります。どちらの売り方で、誰が負担するかを見積もりの段階で確かめます。
相場を自分で調べるには?
国土交通省の「不動産情報ライブラリ」は、不動産の取引価格や地価公示などの価格情報を見られるサイトです。近くで似た広さ・築年数の取引がいくらだったかを見ておくと、査定額が出たときに比べる基準になります。
手取りの計算や税金の扱いは物件ごとに変わります。最終的な判断は、宅地建物取引士のいる不動産会社や税理士などに相談してください。
買取に向いている空き家、仲介を先に試したい空き家は?
この章のポイント
- 傷みが大きい・遠方・急ぐ事情があるなら買取も候補
- 価格を優先し、時間をかけられるなら仲介を先に検討
- 最初からどちらかに決めず、両方の査定を取って比べる
どちらが合うかは、家の状態、場所、家族の事情で変わります。次は、判断の入り口にする例です。
買取か仲介かを、最初から一つに決める必要はありません。次の章のように、両方の査定を取ってから比べる方法もあります。
建物が古い・傷みがある
- 買取を検討する例:東急リバブルの解説では、買取は契約不適合責任が免責となるケースが多く、古い物件でも安心して売却しやすいとしている
- 仲介を先に検討する例:築年数が比較的新しく、手入れされている
家財が残っている
- 買取を検討する例:アットホームの解説では、買取は基本的に空き家をそのままの状態で引き渡すことができるとしている(残置物の扱いは会社ごとの条件を確かめる)
- 仲介を先に検討する例:片付けが済んでいる、または進められる
空き家が遠方にある
- 買取を検討する例:内覧の立ち会いや管理が難しい(買取は内覧対応が不要な場合が多い:東急リバブルの解説)
- 仲介を先に検討する例:近くに住む家族が立ち会える
売却を急ぐ事情がある
- 買取を検討する例:3,000万円控除の売却期限が近い、早く現金化したい
- 仲介を先に検討する例:売却を急がない
価格の優先度
- 買取を検討する例:価格よりも、期間や手間、引き渡し後の責任を軽くしたい
- 仲介を先に検討する例:価格をできるだけ高くしたい
接道の条件を満たさず建て替えができない家、共有名義の家など、仲介で買主が見つかりにくい家の選択肢は、相続した実家を売る流れと税金の「売れにくい実家は、どうすればいい?」でも整理しています。売れる見込みも使う予定もない相続した土地は、一定の要件のもとで国に引き取ってもらう相続土地国庫帰属制度もあります。建物がある土地は申請できず、原則として取り壊してから申請します(相続土地国庫帰属制度の使い方)。
片付けの費用の目安は遺品整理の費用相場、実家全体をどの順で手放すかは実家じまいは何から始める?で解説しています。
持ち続ける場合の負担も並べておく
売るか持ち続けるかを考えるときは、維持の負担も比べておくと判断しやすくなります。
- 総務省の令和5年住宅・土地統計調査では、全国の空き家は900万2千戸(空き家率13.8%)です。そのうち、賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家は385万6千戸で、2018年から36万9千戸増えています。
- 住宅が建っている土地は、固定資産税の課税標準が3分の1(200㎡以下の部分などは6分の1)になる特例があります(地方税法第349条の3の2)。ただし、空家等対策の推進に関する特別措置法にもとづいて勧告を受けた「特定空家等」や「管理不全空家等」の敷地は、この特例の対象から外れます。
売り方の選び方や持ち続けた場合の税負担について、最終的な判断は宅地建物取引士・税理士などに相談してください。
買取業者の免許と処分歴は、どう調べる?
この章のポイント
- 免許番号は国土交通省の検索システムで照合できる
- 行政処分は最近5年分を別のサイトで検索できる
- 断定的な勧誘や威迫は宅建業法で禁止されている
宅地建物取引業法第12条は、「第三条第一項の免許を受けない者は、宅地建物取引業を営んではならない。」と定めています。買取業者に依頼する前に、免許番号を確かめます。
免許番号はどう読む?
免許番号は「国土交通大臣(2)第◯◯◯◯号」「◯◯県知事(3)第◯◯◯◯号」のように表示されます。
国土交通大臣
2つ以上の都道府県に事務所を置いて営業する業者
根拠:宅地建物取引業法第3条第1項
◯◯県知事・◯◯府知事など
1つの都道府県にだけ事務所を置いて営業する業者
根拠:宅地建物取引業法第3条第1項。免許はその事務所の所在地を管轄する知事が出す
( )内の数字
岡山県の案内では、免許の更新回数+1
出典:岡山県の案内(2024年7月12日更新)。同じ案内では、営業年数の長さを示すとしている
免許の有効期間
5年
根拠:宅地建物取引業法第3条第2項
大臣免許か知事免許かは、事務所をどこに置いているかによる区分です。
「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」で照合する手順
- システムを開く国土交通省の「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」から、宅地建物取引業者の検索画面を開きます。
- 免許番号で探す名刺やチラシ、ホームページに書かれた免許番号を使い、免許行政庁(国土交通大臣または都道府県)を選んで番号を入れます。
- 番号が分からなければ商号で探す商号は「株式会社・有限会社等を除いた名称」で入力します。カナと漢字の欄があります。
- 登録内容と見比べる免許番号、商号、代表者名、所在地が、受け取った名刺や資料と合っているかを確かめます。
2025年4月1日の更新で、業者の概要に従事者と専任の宅地建物取引士の総数が加わりました。システムの注意書きでは、情報は許可等行政庁が登録したもので、宅建業者の情報は月2回の更新のため、実際の情報と時差が出ることがあるとしています。
行政処分の履歴は「ネガティブ情報等検索サイト」で
国土交通省の「ネガティブ情報等検索サイト」では、宅地建物取引業者の免許取消・業務停止・指示の処分を、最近5年分検索できます。情報はおおむね1か月に1度更新されます。
京都府・兵庫県・愛知県など、このサイトに載せず自らのサイトで処分情報を公表している府県もあります。業者の免許行政庁がそうした府県なら、その府県のサイトも確かめてください。
法律で禁止されている勧誘のしかた
国土交通省は「高齢者の自宅の売却トラブルにご注意ください!」というページで、不動産業者が買主となる自宅の売却トラブルに注意を呼びかけ、宅地建物取引業法で禁止されている勧誘行為を示しています。
将来の利益について、確実だと誤解させる断定的判断を示す
根拠:宅地建物取引業法第47条の2第1項
契約させるため、または解除を妨げるために威迫する
根拠:宅地建物取引業法第47条の2第2項
勧誘の前に、会社名・担当者名・勧誘の目的を告げない
根拠:宅地建物取引業法施行規則第16条の11第1号ハ(国土交通省のページでは改正前の第16条の12第1号ハと表示)
契約しない、勧誘を受けたくないと伝えたのに勧誘を続ける
根拠:宅地建物取引業法施行規則第16条の11第1号ニ(国土交通省のページでは改正前の第16条の12第1号ニと表示)
迷惑を覚えさせるような時間に電話や訪問をする
根拠:宅地建物取引業法施行規則第16条の11第1号ホ(国土交通省のページでは改正前の第16条の12第1号ホと表示)
深夜や長時間の勧誘など、私生活や業務の平穏を害する方法で困惑させる
根拠:宅地建物取引業法施行規則第16条の11第1号ヘ(国土交通省のページでは改正前の第16条の12第1号ヘと表示)
電話や訪問、はがきで買取を持ちかけられた場合も、その場で決めずに、免許番号と処分歴を調べてから検討してください。業者の対応が法令に反していないかの最終的な判断は、免許行政庁や弁護士などに相談してください。
査定はどう取って、何を比べる?
この章のポイント
- 仲介と買取の両方の価格を、複数社から書面で受け取る
- 知っている不具合は査定前にメモにしておく
- 自治体の空き家相談窓口も使える
査定の進め方
- 相場を調べる不動産情報ライブラリで、近くの取引価格を確かめます。
- 複数の会社に依頼する遠方の空き家では、不動産一括査定サービスで複数社にまとめて依頼する方法もあります。
- 仲介と買取の両方の価格を聞く同じ会社に「仲介ならいくらで売り出すか」「買い取るならいくらか」を出してもらうと、差の理由を聞きやすくなります。
- 現地を見てもらう建物の傷みや境界の状況は、現地を見ないと価格に反映されにくくなります。遠方なら、立ち会いを家族の誰が担うかを先に決めておきます。
- 書面で受け取る口頭の金額は比べにくく、後で食い違いが起きやすくなります。価格の根拠と条件を書面で受け取ります。
査定の前に「不具合のメモ」を作っておく
登記事項証明書や固定資産税の納税通知書のほか、雨漏り・シロアリ・設備の故障・修繕の履歴など、知っている不具合をメモにしておきます。免責の特約を結んでも、知りながら告げなかった事実については責任を免れないためです(民法第572条)。
相続した家の場合、法務省のQ&Aでは「相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、相続登記をする必要があります」と説明されています。そろえる資料と登記の期限は、相続した実家を売る流れと税金にまとめています。
査定結果を並べて比べること
- 買取価格と、仲介の場合の売り出し価格
- 価格の根拠(近くの取引事例など)
- 価格に含まれる作業(残置物の撤去・解体・測量)と、売主の負担として残る作業
- 契約不適合責任の扱い(免責の範囲)
- 手付金の額と、決済・引き渡しの時期
- 3,000万円控除を使う場合の特約への対応
- 会社の免許番号と、説明の分かりやすさ
いちばん高い価格を出した会社が、そのまま最良の相手とは限りません。価格に何が含まれていて、何が売主の負担として残るかまで並べて比べてください。
自治体の相談窓口も使える(京都市の例)
自治体によっては、空き家の売却や活用について専門家に相談できる制度があります。たとえば京都市の「空き家活用・流通支援専門家派遣制度」のチラシ(令和8年3月発行)では、次のように案内されています。
対象
- 京都市内の一戸建て・長屋建ての空き家(1年以内に空き家になる予定のものを含む)
- 所有者・管理者・委任を受けた人が申し込める
- 集合住宅と倉庫は対象外
派遣される専門家
- 京都市の研修を受けた宅地建物取引士である「地域の空き家相談員」と建築士
内容
- 賃貸や売却の方法、相場、修繕箇所と費用などの助言
- 現地訪問の後に「所見書」が届く
- 派遣後に、相続や登記について司法書士に無料で相談できる
費用
無料
- 派遣後に活用や改修を専門家へ依頼する場合は費用がかかることがある
- 予算に達し次第終了
申込先
- 京都市都市計画局住宅室住宅政策課「空き家相談窓口」
空き家のある市区町村にも似た制度がないか、空き家の相談窓口に問い合わせてみてください。特定の業者に依頼する前に、相場や売り方の助言を受けられる場合があります。
査定額の妥当性や登記について迷う場合、最終的な判断は宅地建物取引士・司法書士などに相談してください。
契約書に署名する前に、何を確かめる?
この章のポイント
- 売買契約の書面に載る項目は宅建業法第37条で決まっている
- 免責の範囲、手付金、解除の条件を条文で確かめる
- 急かされても、内容に納得するまで契約しない
宅地建物取引業法第37条は、宅建業者が売買の当事者になったとき、相手方に契約内容を記載した書面を遅滞なく交付することを定めています。買取では、売主のあなたがこの「相手方」です。署名の前に、次の点を確かめます。
- 免許の照合買主の会社の免許番号が、検索システムの登録内容と一致しているか(建設業者・宅建業者等企業情報検索システム)
- 処分歴最近5年の行政処分がないか(ネガティブ情報等検索サイト、載っていない府県は各府県のサイト)
- 名義と共有者相続登記が済み、売主が登記上の名義人になっているか。共有なら共有者全員が売却に合意しているか(登記事項証明書)
- 住宅ローンローンが残っている場合、売却代金で完済し抵当権を抹消できるか(金融機関に確認)
- 代金代金の額、支払いの時期と方法(第37条第1項第3号)
- 引き渡しと登記引き渡しの時期と、移転登記の申請の時期(同第4号・第5号)
- 手付金など代金以外のお金の額、受け渡しの時期と目的(同第6号)
- 解除・違約金契約の解除に関する定め、損害賠償額の予定・違約金の定め(同第7号・第8号)
- 契約不適合責任責任についての定め(免責の条文と範囲)(同第11号)。知っている不具合は告知書などで書面に残す(民法第572条)
- 税金の精算固定資産税などの負担の定め(同第12号)
- 作業の分担残置物の撤去、解体、測量・境界の確定を、どちらがいつまでに行うか(契約書の特約、見積書)
- 3,000万円控除の特約控除を使う場合、買主が耐震改修や取壊しを行う期限の特約があるか(次の章)
急かされたら、いったん持ち帰る
国民生活センターは、長時間の勧誘で売却を迫られた相談などを挙げ、「よくわからないことや納得できないことがあったら、解決するまで契約はしない」と助言しています。
国土交通省のページでは、自宅を売却したあと賃貸借契約を結んで住み続ける「リースバック契約」を迫られるトラブルにも触れています。売買と賃貸借がセットになった契約を持ちかけられた場合も、内容を理解するまで署名しないでください。
契約書の条文の意味や、解除・違約金の扱いについて、最終的な判断は宅地建物取引士・弁護士などに相談してください。
相続した空き家を買取で売るとき、3,000万円控除で気をつけることは?
この章のポイント
- 親族が経営する会社など「特殊な関係のある法人」への売却は対象外
- 買主が売却後に取り壊す場合は、翌年2月15日までの工事が要件
- 京都市の資料は、期限の特約を契約書に入れることを勧めている
原則として親が一人で住んでいた家を相続して売った場合(老人ホームなどへの入所で空き家になっていた場合も含みます)、一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例があります。要件の全体と申告の方法は相続した実家を売る流れと税金で詳しく整理しています。ここでは、買取で売るときに特に関係する点を、国税庁 No.3306(令和8年4月1日現在法令等)の記載から抜き出します。
- 2016年(平成28年)4月1日から2027年(令和9年)12月31日までの売却で、かつ相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売る必要があります。売却代金は1億円以下です。
- 昭和56年5月31日以前に建築された家が対象で、区分所有建物登記がされている建物は対象外です。
- 親子や夫婦など「特別の関係がある人」への売却は対象外です。国税庁は、生計を一にする親族や特殊な関係のある法人なども含まれるとしています。親族が経営する会社に買い取ってもらう場合は注意が必要です。
- 2024年1月1日以後の売却では、家と敷地を相続した相続人が3人以上なら、控除は1人あたり最高2,000万円までです。
買主が取り壊して再販する場合は、工事の期限に注意
2024年1月1日以後の売却では、売った後に買主が耐震改修や取壊しをする場合も対象になりました。家が、譲渡の時から譲渡の日の属する年の翌年2月15日までに、一定の耐震基準を満たすか、全部取り壊されることが要件です。
ここに注意
京都市の「被相続人居住用家屋等確認申請 よくある質問と答え」(令和6年6月時点)では、工事の完了期限は要件として定められているため、売主に非がない事由で工事が完了しなかった場合でも、特例の対象にならないとしています。
同じ資料では、売買契約書の特約などで、譲渡の時から翌年2月15日までに家を耐震基準に適合させるか取り壊すことを定めておくことが望ましいとしています。
特例を使えるか、どの売り方が有利かは個別の事情で変わります。最終的な判断は、売買契約の前に税理士・税務署などに相談してください。
相談先はどこ?
| 相談したいこと | 相談先 |
|---|---|
| 売り方の選び方、査定額の妥当性 | 宅地建物取引士のいる不動産会社(複数社を比べる)、空き家のある市区町村の空き家相談窓口 |
| 業者の勧誘や契約のトラブル | 消費生活センターなど(消費者ホットライン「188」で最寄りの窓口を案内) |
| 業者の法令違反が疑われる | 業者の免許行政庁(免許番号に表示された国土交通大臣または都道府県知事) |
| 相続登記、名義の整理 | 司法書士、法務局 |
| 3,000万円控除、譲渡所得の税金 | 税理士、税務署 |
| 契約の解除や損害賠償などの争い | 弁護士 |
国土交通省は、トラブルに備えて、勧誘の日時、会社名・所在地・免許証番号、担当者名、勧誘の内容を記録し、免許行政庁に情報提供するよう案内しています。
この記事は一般的な説明です。契約の条件や税金の扱いは物件と家族の状況で変わるため、最終的な判断は宅地建物取引士・司法書士・弁護士・税理士などに相談してください。
よくある質問
Q1. 住宅ローンが残っている空き家でも、買い取ってもらえますか?
アットホームの解説では、抵当権が抹消されている状態でなければ不動産を売却することはできないとしています。ローンが残っている場合は、売却代金で完済できるかを先に確かめます。
売却代金で足りない場合の対応は、金融機関と不動産会社に相談してください。
Q2. 解体して更地にしてから売ったほうが、高く買い取ってもらえますか?
一概にはいえません。解体費は売主の負担になり、家を取り壊して住宅の敷地でなくなると、住宅用地の固定資産税の特例(地方税法第349条の3の2)の対象から外れます。アットホームの解説では、買取は基本的に空き家をそのままの状態で引き渡せるため、解体する必要もないとしています。
3,000万円控除を使う場合は、取り壊してから売るか、売った後に買主が取り壊すかで要件が変わります。最終的な判断は税理士などに相談してください。
Q3. 自治体の「空き家バンク」に登録するのと、買取はどう違いますか?
空き家バンクは、空き家を使いたい人を探すための情報の公開で、利用したい人が見つかるまで売却は決まりません。不動産会社が自ら買う買取とは、この点が異なります。
国土交通省によると、自治体の空き家等の情報を横断して検索できる「全国版空き家・空き地バンク」は、公募で選ばれた株式会社LIFULLとアットホーム株式会社が、試行運用を経て2018年(平成30年)4月から本格運営しています。登録の条件は、空き家のある自治体に確かめてください。
Q4. 「買取保証」とは何ですか?
HOME4U(NTTデータ・ウィズ)の解説では、仲介で売れなかった場合に買取を約束する仕組みとして紹介され、時間が許すなら最初に3か月ほど仲介で売れないか試す使い方が挙げられています。
同じ解説では、仲介での売却期間中にあえて成約を遅らせ、安く買いたたこうとする悪質な不動産会社もあると注意しています。保証される買取価格や期間は会社ごとに異なるため、契約前に書面で確かめてください。
出典
- 東急リバブル「不動産の仲介と買取の違いとは? メリット・デメリットを比較」(2025年9月26日更新)(確認日:2026-10-27)
- アットホーム「空き家売却の方法は?税金や費用、売却時の注意点について解説」(2024年12月16日更新)(確認日:2026-10-27)
- HOME4U(NTTデータ・ウィズ)「不動産買取のデメリットは3つ!メリットやリスク回避、適切な売却方法まで解説」(2026年8月5日更新)(確認日:2026-10-27)
- 国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」(確認日:2026-10-27)
- 国土交通省「建設業者・宅建業者等企業情報検索システム」宅地建物取引業者の検索画面(確認日:2026-10-27)
- 国土交通省「ネガティブ情報等検索サイト」宅地建物取引業者(確認日:2026-10-27)
- 国土交通省「高齢者の自宅の売却トラブルにご注意ください!」(確認日:2026-10-27)
- 国民生活センター「高齢者の自宅の売却トラブルに注意-自宅の売却契約はクーリング・オフできません!-」(2021年6月24日)(確認日:2026-10-27)
- 岡山県「不動産取引に関する注意点について」(2024年7月12日更新)(確認日:2026-10-27)
- 国土交通省「不動産情報ライブラリ」(確認日:2026-10-27)
- 国土交通省「宅地建物取引業者が宅地又は建物の売買等に関して受けることができる報酬の額」(昭和45年建設省告示第1552号、令和6年7月1日以降、PDF)(確認日:2026-10-27)
- 国土交通省「空き家等に係る媒介報酬規制の見直し」(PDF)(確認日:2026-10-27)
- 国土交通省「空き家・空き地バンク総合情報ページ」(確認日:2026-10-27)
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」(令和8年4月1日現在法令等)(確認日:2026-10-27)
- 国税庁「No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置」(令和8年4月1日現在法令等)(確認日:2026-10-27)
- 京都市「被相続人居住用家屋等確認申請 よくある質問と答え」(令和6年6月時点、PDF)(確認日:2026-10-27)
- 京都市「空き家活用・流通支援専門家派遣制度」(チラシ、令和8年3月発行、PDF)(確認日:2026-10-27)
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 住宅及び世帯に関する基本集計(確報集計)結果」(2024年9月25日、PDF)(確認日:2026-10-27)
- 法務省「相続登記の申請義務化に関するQ&A」(令和7年3月27日更新)(確認日:2026-10-27)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法」(第3条・第12条・第37条・第37条の2・第40条・第47条の2)(確認日:2026-10-27)
- e-Gov法令検索「宅地建物取引業法施行規則」(確認日:2026-10-27)
- e-Gov法令検索「民法」(第562条〜第564条・第566条・第572条)(確認日:2026-10-27)
- e-Gov法令検索「地方税法」(第349条の3の2)(確認日:2026-10-27)
