相続土地国庫帰属制度の使い方|費用・要件・デメリットを整理

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相続土地国庫帰属制度の使い方(費用・要件・デメリットの整理)

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※2026年10月時点の情報です。

相続した土地のうち、売れる見込みも使う予定もない土地を、一定の要件のもとで国に引き取ってもらう制度があります。「相続土地国庫帰属制度」です。2023年(令和5年)4月27日に始まりました。この記事では、法務省の案内と法令(相続土地国庫帰属法・同施行令)をもとに、使い方を整理します。

結論:相続土地国庫帰属制度は、どんな土地に使う?

この制度は「お金をもらって手放す」方法ではなく、「お金を払って管理の負担から抜ける」方法です。売却や買取ができる土地なら、そちらのほうが手元にお金が残ります。目安の数字は次のとおりです。

  • 申請できる人:相続または相続人への遺贈で土地を取得した人(共有地は共有者全員で申請)
  • 審査手数料:土地1筆につき14,000円。取下げ・却下・不承認でも返還されない
  • 負担金:原則20万円。市街化区域などの宅地・農地と、森林は面積に応じて算定
  • 審査期間:標準処理期間は8か月(事案によっては超える場合がある)
  • 建物:建物がある土地は申請できない。原則として取り壊してから申請

法務省の統計(2026年9月30日現在、速報値)では、申請6,125件のうち3,231件が国庫に帰属しています。

この記事の目次
  1. 誰が申請できて、どんな土地が対象になる?
  2. 申請できない土地・承認されない土地はどれ?
  3. 費用はいくらかかる?
  4. 申請から引き取りまで、どんな流れで何か月かかる?
  5. 実際に何件くらい引き取られている?
  6. 国庫帰属のデメリット・注意点は?
  7. 売却・買取・寄付・相続放棄と比べると、どれが合う?
  8. 建物がある土地は、解体費をどう考えればいい?
  9. 迷ったときは誰に相談すればいい?
  10. よくある質問
  11. 出典

誰が申請できて、どんな土地が対象になる?

この章のポイント

  • 相続か、相続人への遺贈で取得した土地が対象
  • 共有地は共有者全員が共同で申請する
  • 手続きと手数料は土地1筆ごと

申請できるのは「相続か、相続人への遺贈」で取得した人です

相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律(以下「相続土地国庫帰属法」)では、相続または遺贈で土地の所有権の全部または一部を取得した人が申請できます(第2条第1項)。遺贈は「相続人に対する遺贈に限る」とされています(第1条)。

法務省の案内では、売買など相続等以外で土地を取得した人や、法人は、基本的に利用できないとしています。

親から相続した土地

申請できる

制度開始(2023年4月27日)より前に相続した土地

申請できる

法務省のよくある質問

相続人として遺言で受け取った土地(遺贈)

申請できる

相続人ではない人が遺贈で受け取った土地

申請できない

自分で買った土地

申請できない

きょうだいで共有している土地

共有者全員が共同で申請すればできる

相続土地国庫帰属法第2条第2項

共有者の一人が売買で持分を取得している土地

相続等で持分を取得した共有者と共同で申請すればできる

相続土地国庫帰属法第2条第2項

きょうだいで共有している土地は、一人だけでは申請できません。共有者全員の足並みをそろえることが、最初の関門になります。

土地は「1筆ごと」に申請します

土地は登記上「筆(ひつ)」という単位で数えます。審査手数料も1筆ごとにかかり、法務省のよくある質問では、まとめて申請しても軽減はされないとしています(10筆なら14,000円×10筆)。

手放したい土地が何筆あるかは、固定資産税の納税通知書や登記事項証明書で確かめられます。

相続登記や共有者との調整が必要な場合など、最終的な判断は司法書士・弁護士などに相談してください。

申請できない土地・承認されない土地はどれ?

この章のポイント

  • 申請できない「却下事由」と、承認されない「不承認事由」がある
  • 不承認の理由で最も多いのは地上の工作物・樹木など(49件)
  • 境界が明らかでない土地は申請の段階で却下される

要件は2段階です。申請そのものができない「却下事由」と、申請はできても承認されない「不承認事由」があります。法務省の統計(2026年9月30日現在、速報値)で、実際にその理由で却下・不承認になった件数もあわせて載せます。

申請の段階で却下される土地(却下事由)

相続土地国庫帰属法第2条第3項と施行令第2条で定められています。

建物がある土地

却下4件

申請前の対応の例:取り壊して、建物の滅失登記をする

担保権や使用・収益を目的とする権利(抵当権・賃借権など)が設定されている土地

統計に項目なし

申請前の対応の例:権利を抹消・解消する

他人の利用が予定されている土地:現に通路として使われている土地

却下22件

通路部分の扱いを法務局に相談する

他人の利用が予定されている土地:墓地内の土地、境内地

統計に項目なし

対象外と考える

他人の利用が予定されている土地:現に水道用地・用悪水路・ため池として使われている土地

却下1件

対象外と考える

特定有害物質で基準を超えて汚染されている土地

統計に項目なし

対象外と考える

境界が明らかでない土地、所有権の存否・帰属・範囲に争いがある土地

却下23件(境界が明らかでない土地)

申請前の対応の例:隣地の所有者と境界を確認する

このほか、申請の権限がない人による申請(11件、法第4条第1項第1号)と、法第3条第1項・施行規則第3条に定める添付書類の提出がなかったもの(37件、法第4条第1項第2号)でも却下されています。却下は合計86件です(1件に複数の理由が認められる場合があるため、理由別の合計とは一致しません)。

審査の結果、承認されない土地(不承認事由)

相続土地国庫帰属法第5条第1項と施行令第4条で定められています。統計に件数がある理由は次のとおりです。

不承認事由不承認件数
勾配30度以上かつ高さ5m以上の崖があり、通常の管理に過分の費用・労力がかかる土地7件
通常の管理・処分を妨げる工作物・車両・樹木などが地上にある土地49件
除去しなければ管理・処分できない有体物が地下にある土地3件
民法上の通行の権利が現に妨げられている土地4件
所有権に基づく使用・収益が現に妨害されている土地8件
災害の危険があり、被害を防ぐ措置が必要な土地11件
国による追加の整備が必要な森林37件
国庫帰属後に、国が管理費用以外の金銭債務を負担することになる土地12件

不承認は合計103件です(同上)。このほか、鳥獣や病害虫などによる被害のおそれがある土地なども、不承認事由として施行令に定められています。

最も多いのは地上の工作物・樹木などです。法務省のよくある質問では、通常の管理を妨げる樹木の例として、果樹園の樹木、倒木のおそれがある枯れた樹木、定期的な伐採が必要な竹が挙がっています。切り株は、一般的には該当しないとされています。

境界の確認や土地の状態が要件に当たるかの最終的な判断は、法務局の相談のうえ、土地家屋調査士・司法書士などに相談してください。

費用はいくらかかる?

この章のポイント

  • 法務局に払うのは審査手数料と負担金の2つ
  • 負担金は原則20万円。市街化区域の宅地などは面積で計算
  • 解体・伐採・書類作成の依頼費用は別にかかる

国庫帰属で法務局に払う費用は、「審査手数料」と「負担金」の2つです。そのほかに、建物の解体や書類作成の依頼をすれば、その費用がかかります。

審査手数料:1筆14,000円、戻ってきません

審査手数料は土地1筆ごとに14,000円です(施行令第3条)。申請書に収入印紙を貼って納めます。取下げ・却下・不承認になっても返還されません。

負担金:原則20万円、例外は面積で計算します

負担金は、国有地の種目ごとに、10年分の標準的な管理費用を考慮して定められた額です(法第10条第1項)。承認を受けたときに一度だけ納めます。金額は土地の区分と区域で決まります(施行令第5条第1項)。

宅地のうち、市街化区域内にあるもの

面積に応じて算定

区域区分が定められていない都市計画区域では、用途地域が定められている区域内にあるもの

農地(田・畑)のうち、市街化区域内・農用地区域内・土地改良事業等の施行区域内にあるもの

面積に応じて算定

市街化区域の扱いは宅地と同じ

森林

面積に応じて算定

上記以外の土地(市街化区域外の宅地、上記の区域外の農地、雑種地、原野など)

面積にかかわらず20万円

区分の決め方について、施行令は、宅地を「その現況及び従前の使用状況に照らして直ちに建物の敷地の用に供することができると認められる土地」、農地は主に農地(農地法に規定する農地)として利用されている土地、森林は「主に森林として利用されている土地」と、主な利用の状況で定めています。建物を取り壊した直後の土地や、耕作していない農地がどの区分になるかは、申請前に法務局で確かめてください。

面積に応じて算定する場合の式は、施行令第5条第1項で次のように定められています。1,000円未満は切り捨てです(同条第2項)。

市街化区域などの宅地

面積算定式
50㎡以下面積×4,070円+208,000円
50㎡超100㎡以下面積×2,720円+276,000円
100㎡超200㎡以下面積×2,450円+303,000円
200㎡超400㎡以下面積×2,250円+343,000円
400㎡超800㎡以下面積×2,110円+399,000円
800㎡超面積×2,010円+479,000円

市街化区域・農用地区域などの農地

面積算定式
250㎡以下面積×1,210円+208,000円
250㎡超500㎡以下面積×850円+298,000円
500㎡超1,000㎡以下面積×810円+318,000円
1,000㎡超2,000㎡以下面積×740円+388,000円
2,000㎡超4,000㎡以下面積×650円+568,000円
4,000㎡超面積×640円+608,000円

森林

面積算定式
750㎡以下面積×59円+210,000円
750㎡超1,500㎡以下面積×24円+237,000円
1,500㎡超3,000㎡以下面積×17円+248,000円
3,000㎡超6,000㎡以下面積×12円+263,000円
6,000㎡超12,000㎡以下面積×8円+287,000円
12,000㎡超面積×6円+311,000円

計算例:手数料と負担金を合わせるといくら?

上の式に当てはめた例です(いずれも1筆の場合。この記事での計算)。面積は登記記録の地積で算定されます(法務省のよくある質問)。

市街化区域外の宅地(面積を問わない)

合計214,000円

負担金200,000円+審査手数料14,000円

市街化区域内の宅地 100㎡

合計562,000円

負担金548,000円+審査手数料14,000円

市街化区域内の宅地 200㎡

合計807,000円

負担金793,000円+審査手数料14,000円

農用地区域内の農地(畑) 500㎡

合計737,000円

負担金723,000円+審査手数料14,000円

農用地区域内の農地(畑) 1,000㎡

合計1,142,000円

負担金1,128,000円+審査手数料14,000円

森林 1,500㎡

合計287,000円

負担金273,000円+審査手数料14,000円

森林 3,000㎡

合計313,000円

負担金299,000円+審査手数料14,000円

市街化区域内の宅地は、負担金が数十万円になります。売却できる可能性もあるため、先に査定を取って比べる価値があります。

隣り合う土地は、負担金をまとめて計算できる場合があります

隣接する2筆以上の土地が同じ区分であれば、申出によって1筆の土地とみなして負担金を算定できます(施行令第6条)。法務省の資料では、市街化区域外の宅地100㎡×2筆は、1筆ごとなら40万円、合算すれば20万円になる例が示されています。

申出書は、承認申請書を出した法務局の本局に、申請書の提出後から承認までの間に出します。審査手数料は合算しても筆数分かかります。

そのほかにかかりうる費用

建物の解体費・滅失登記

建物がある場合

後の章で説明

書類作成の依頼費用

報酬は事務所ごとに異なる

承認申請書の作成代行を業務としてできるのは弁護士・司法書士・行政書士(法務省のよくある質問)

境界の確認・測量

必須ではない

境界が分からない場合は、土地家屋調査士への相談が考えられる(法務省のよくある質問)

樹木の伐採、工作物の撤去

不承認事由に当たる場合

費用は自己負担

負担金の区分や合算の申出が使えるかなど、最終的な判断は法務局の相談のうえ、司法書士・行政書士・土地家屋調査士などに相談してください。

申請から引き取りまで、どんな流れで何か月かかる?

この章のポイント

  • 相談も申請も法務局・地方法務局の本局で(相談は予約制)
  • 標準処理期間は8か月。法務局の職員が現地も調べる
  • 負担金は通知が届いた日の翌日から30日以内に納付

法務省の申請の手引き「相続土地国庫帰属制度のご案内(第2版)」と法令をもとに、流れを整理します。

  1. 相談する相談は、土地のある都道府県の法務局・地方法務局の本局(不動産登記部門)で受け付けています。支局・出張所では受け付けていません。土地が遠方なら、近くの法務局・地方法務局の本局でも相談できます。予約制で、対面・電話・ウェブで相談できます(法務局手続案内予約サービス)。
  2. 書類をそろえる承認申請書のほか、土地の位置・範囲を示す図面、境界点の写真、土地の形状の写真、申請者の印鑑証明書が必要です。登記名義人と申請者が違う場合は、相続を証する書面なども要ります。
  3. 申請する土地のある都道府県の法務局・地方法務局の本局(不動産登記部門)に出します。支局・出張所では受け付けていません。審査手数料分の収入印紙を貼ります。
  4. 審査・実地調査書面の審査のほか、法務局の職員が現地を調べます(法第6条)。標準処理期間は8か月で、事案によっては超える場合があります。
  5. 承認の通知承認されると、承認の通知と負担金の納入告知書が届きます。
  6. 負担金を納める通知が届いた日の翌日から30日以内に、納入告知書を添えて日本銀行(本店・代理店・歳入代理店)で納めます。法務局に直接現金を持参して支払うことはできません。
  7. 国庫に帰属する負担金を納めた時点で、土地の所有権が国に移ります(法第11条)。

30日を過ぎると承認が失効

期限内に負担金を納めないと、承認は効力を失います(法第10条第3項)。同じ土地をもう一度引き取ってもらいたい場合は、最初から申請し直しになります。

共有地の場合は、代表者1人が納入告知書を受け取って納付します。申請書に代表受領者を必ず書きます。

申請書の作成を専門家に頼むか、どの書類が必要かの最終的な判断は、法務局の相談のうえ、司法書士・弁護士・行政書士などに相談してください。

実際に何件くらい引き取られている?

この章のポイント

  • 2026年9月30日現在、申請6,125件・帰属3,231件
  • 却下・不承認(計189件)より取下げ(1,162件)が多い
  • 取下げで最も多い理由は「有効活用の見込みが生じた」

法務省の統計(2026年9月30日現在、2026年10月19日公開)です。法務省は、いずれも速報値であるとしています。

申請件数

6,125件

田・畑2,372件、宅地2,135件、山林928件、その他690件

帰属件数

3,231件

宅地1,208件、農用地1,013件、森林229件、その他781件

却下件数

86件

理由は前の章のとおり

不承認件数

103件

理由は前の章のとおり

取下げ件数

1,162件

有効活用の見込みが生じた595件、却下・不承認であることが判明した415件、その他152件

数字から読み取れることを3つ挙げます。

  • 申請の半分強が国庫帰属まで進んでいます。申請6,125件のうち、帰属は3,231件です。申請件数から帰属・却下・不承認・取下げを引いた約1,500件は、審査中などと考えられます(この記事での単純計算)。
  • 却下・不承認より、取下げのほうが多い状況です。取下げのうち415件は「却下・不承認であることが判明した」ためです。審査手数料は取り下げても返還されないため、申請前の相談で要件を確かめておくことが大切です。
  • 取下げの理由で最も多いのは「有効活用の見込みが生じた」(595件)です。国庫帰属を考えながら、売却や活用の可能性を並行して探っておく意味があります。

自分の土地が承認される見込みがあるかの最終的な判断は、法務局の相談のうえ、司法書士・土地家屋調査士などに相談してください。

国庫帰属のデメリット・注意点は?

この章のポイント

  • お金は入らず、手数料と負担金を払う側になる
  • 建物の解体や土地を整える作業は自己負担
  • 共有者のうち一人でも加わらなければ申請できない

制度の性格上、次の点は避けられません。

  • お金にはならない:手放す側が負担金を払います。売却や買取と違い、代金は入りません。
  • 建物があると使えない:原則として取り壊してから申請します。解体費は自己負担です。
  • 費用が戻らない場合がある:審査手数料は、取下げ・却下・不承認でも返還されません。
  • 時間がかかる:標準処理期間は8か月で、事案によっては超える場合があります。
  • 共有者全員の協力が必要:共有地は共有者全員で申請するため、一人でも加わらなければ申請できません。
  • 申請前の手間:境界点の写真の撮影、樹木の伐採、工作物の撤去など、土地を整える作業は自己負担です。

一方で、売れない・使い道がない・管理だけが続く土地を、ほかの相続財産と切り離して手放せる点は、次の章で比べる相続放棄にはない特徴です。

自分の土地でどの負担が大きくなるかの最終的な判断は、司法書士・弁護士・土地家屋調査士などに相談してください。

売却・買取・寄付・相続放棄と比べると、どれが合う?

この章のポイント

  • 売れる可能性があるなら、先に査定を取って比べる
  • 自治体への寄付は、名古屋市の例では受け入れる土地を限っている
  • 相続放棄は3か月以内。「この土地だけ」は放棄できない

売却(仲介)

代金を受け取る(仲介手数料はかかる)

  • 対象:土地・建物
  • 期間の目安:買主が見つかるまで
  • 向いている土地:立地がよく、買い手がつきそう
  • 注意点:売れるまで管理と固定資産税が続く

買取

代金を受け取る

  • 対象:土地・建物
  • 価格:東急リバブルの解説では、市場価格の7〜9割程度が一般的で、仲介より低くなる傾向
  • 向いている土地:古家付き・遠方・早く手放したい
  • 注意点:会社ごとに査定額や条件が違う

寄付(自治体)

原則として代金は受け取れない

  • 対象:主に土地
  • 向いている土地:自治体が事業に使える土地
  • 注意点:受け入れの扱いは自治体ごとに異なる

相続土地国庫帰属

審査手数料と負担金を払う

  • 対象:土地のみ(建物がある土地は不可)
  • 期間の目安:標準処理期間8か月+準備期間
  • 向いている土地:売れない・使い道がない土地
  • 注意点:要件が多い。解体費は自己負担

相続放棄

裁判所に収入印紙800円分(申述人1人につき)+連絡用の郵便切手

  • 対象:相続財産すべて
  • 期限:自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内に申述
  • 向いている状況:借金が多いなど、相続自体をやめたい
  • 注意点:土地だけを選んで放棄することはできない

売却・買取:お金が残る可能性があるなら先に確かめます

建物付きのまま、または土地として売れるなら、解体費や負担金を払う国庫帰属より、手元にお金が残ります。相続した実家を売る流れや税金の特例は、相続した実家を売る流れと税金で詳しく説明しています。

仲介で買い手がつかない土地でも、不動産会社の買取なら値段がつく場合があります。国庫帰属を申請する前に、一度は査定を取って「売れない土地かどうか」を確かめておくと、比べる土台ができます。

寄付:受け入れの扱いは自治体ごとに異なります

名古屋市の例では、「不動産の寄附(遺贈を含む)について」で、市の事業に利用できる土地や、処分(換価)が容易であると見込まれる土地(原則として更地)を受け入れの基準にしています。

同じページでは、隣地との境界が未確定な土地、抵当権などが設定されている土地、維持管理が困難な土地、土壌汚染や不法投棄物が残る土地、崖崩れのおそれがある土地などは受け入れられないとしています。扱いは自治体ごとに異なるため、土地がある市区町村に確かめてください。

相続放棄:「この土地だけ」は放棄できません

相続放棄は、家庭裁判所に申述して、相続人ではなくなる手続きです。民法第939条は「相続の放棄をした者は、その相続に関しては、初めから相続人とならなかったものとみなす」と定めています。そのため、預貯金や実家は受け取って、使わない山林だけを放棄する、という使い方はできません。

項目内容(裁判所の案内)
期限自己のために相続の開始があったことを知ったときから3か月以内(家庭裁判所に期間の伸長を申し立てられる場合がある)
申述先被相続人の最後の住所地の家庭裁判所
費用収入印紙800円分(申述人1人につき)、連絡用の郵便切手(郵便料は裁判所ごとに異なる)

また、放棄の時に相続財産を現に占有している人は、相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、その財産を保存しなければなりません(民法第940条)。放棄すれば管理の問題がすぐになくなるとは限りません。

3か月の申述期間を過ぎて土地を相続している場合は、売却・買取・寄付・国庫帰属の中から選ぶことになります。実家全体の片付けや、何から手をつけるかの順番は、実家じまいは何から始める?で整理しています。

相続放棄や手放し方の選択の最終的な判断は、弁護士・司法書士などに、売却の税金は税理士に相談してください。

建物がある土地は、解体費をどう考えればいい?

この章のポイント

  • 原則として建物を取り壊し、滅失登記をしてから申請
  • 木造の解体費は坪3〜5万円程度が目安(東急リバブルの解説)
  • 更地にすると、翌年度から固定資産税が上がる場合がある

原則として、取り壊してから申請します

建物がある土地は却下事由です。法務省のよくある質問では、原則として建物を取り壊してから申請する必要があり、建物の滅失登記も原則として所有者が行うとしています。

不動産登記法第57条は、建物が滅失したときは、表題部所有者または所有権の登記名義人が、滅失の日から1か月以内に滅失の登記を申請しなければならないと定めています。

解体費は、延床面積と坪単価で目安をつけます

東急リバブルの解説(Lnote、2026年5月14日更新)では、一般的な木造住宅の解体費は坪単価3〜5万円程度で、総床面積40坪なら120〜200万円が相場とされています。

同じ解説では、重機が入りにくい場所、搬出用のダンプが入れない場所、アスベストの撤去が必要な場合などは、費用が上がるとしています。

アスベストについては、報告の対象にならない工事でも、建築物の解体・改修工事を行う際には事前調査が必要です。令和4年(2022年)4月1日以降に着手する工事のうち、解体部分の床面積が80㎡以上の建築物の解体工事などは、元請業者(または自主施工者)が事前調査の結果を自治体に報告します(大阪府「石綿事前調査結果報告制度について」)。

実際の金額は建物と敷地の条件で大きく変わるため、複数社から見積もりを取って比べてください。

解体する前に、3つの数字を並べて比べます

比べる数字確認先
解体費+国庫帰属の費用(審査手数料・負担金)解体業者の見積もり、この記事の計算例
建物付きのまま売った・買い取ってもらった場合の金額不動産会社の査定
取り壊した後に承認されなかった場合の負担取り壊した後も、土地の管理と固定資産税が続く

最後の点は見落としやすいところです。住宅用地の特例では、1月1日現在で住宅が建っている敷地のうち、住宅1戸あたり200㎡までの部分は課税標準が評価額の6分の1、200㎡を超える部分(家屋の床面積の10倍まで)は3分の1に軽減されます(北九州市「固定資産税(土地)に対する特例措置」)。取り壊して更地になると、翌年度から特例が外れ、税額が上がる場合があります。

取り壊す前に法務局へ

取り壊してから承認されないと、解体費と税の負担だけが残ります。取り壊す前に法務局に相談して、ほかの要件(境界・樹木・工作物など)に問題がないかを確かめておくと安心です。

親が一人で住んでいた古い家を相続して売る場合は、空き家の3,000万円特別控除を使える可能性があります。家を残して売るか、取り壊してから土地を売るかで要件が変わるため、相続した実家を売る流れと税金もあわせて確認してください。

滅失登記や境界の確認、税金の扱いなど、最終的な判断は土地家屋調査士・司法書士・税理士などに相談してください。

迷ったときは誰に相談すればいい?

相談したいこと相談先
制度の対象になるか、申請書の書き方法務局・地方法務局の本局(予約制。対面・電話・ウェブ)
申請書の作成代行弁護士、司法書士、行政書士
相続登記、共有者との調整司法書士、弁護士
境界の確認、測量、建物の滅失登記土地家屋調査士
売れるかどうか、買取の可能性不動産会社(複数社を比べる)
自治体への寄付土地がある市区町村
相続放棄家庭裁判所、弁護士、司法書士

この記事は制度の一般的な説明です。ご自身の土地が対象になるか、どの手放し方が合うかの最終的な判断は、法務局の相談のうえ、司法書士・弁護士・土地家屋調査士などに相談してください。

よくある質問

Q1. 申請の手続きを司法書士に丸ごと任せることはできますか?

承認申請書の作成代行は、弁護士・司法書士・行政書士に依頼できます。ただし、法務省のよくある質問では、承認申請の手続きをすることができるのは「所有者本人又は法定代理人に限られます」とされています。資格者を含め、ほかの人が代理することはできません。

専門家に頼めるのは書類の作成までで、申請は所有者本人の名前で行います。最終的な判断は、司法書士・弁護士・行政書士などに相談してください。

Q2. 申請前に土地の測量は必要ですか?

法務省のよくある質問では、境界確定図や測量成果は承認申請の必須の添付書面ではないとしています。境界点を示す写真は必要書類です。境界が分からない場合は、土地家屋調査士への相談が考えられると案内されています。

なお、負担金は登記記録の地積で算定され、現況の面積が地積と違う場合は、原則として承認前に地積更正または地積変更の登記が必要です(同)。最終的な判断は、土地家屋調査士などに相談してください。

Q3. 山林(森林)も引き取ってもらえますか?

申請できます。負担金は面積に応じて算定されます。ただし、経営管理権が設定されたままの森林は申請できないため、事前に解除しておく必要があります(法務省のよくある質問)。

国による追加の整備(造林・間伐・保育)が必要な森林は不承認事由で、統計でも37件が不承認になっています。最終的な判断は、法務局の相談のうえ、司法書士・土地家屋調査士などに相談してください。

Q4. 承認されたあとで、問題が見つかったらどうなりますか?

偽りその他不正の手段で承認を受けたことが判明した場合は、承認が取り消されることがあります(法第13条)。法務省の手引きでは、この場合、納めた負担金も還付されないとしています。

また、承認の時点で却下事由・不承認事由に当たる事情があり、それを知りながら告げずに承認を受けて国に損害が生じた場合は、損害賠償の責任を負います(法第14条)。最終的な判断は、弁護士・司法書士などに相談してください。

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執筆・編集:しまい支度編集部(編集方針)

最終確認日:2026年10月27日