相続した実家を売る流れと税金|空き家3,000万円控除の要件も整理

最終更新日:

相続した実家を売る流れと税金|空き家3,000万円控除の要件も整理(しまい支度)

ホーム › 実家じまい

※2026年10月時点の情報です。

相続した実家を売るときは、登記・税金・特例の期限が重なります。この記事では、手続きの順番、税金の考え方、使える特例の要件を、法務省と国税庁の公式情報をもとに整理します。

結論:相続した実家は、どの順番で売ればいい?

相続した実家は、次の順で進めます。

  1. 相続登記:遺産分割の話し合いをして、名義を相続人に移す
  2. 査定と売り方の選択:複数の不動産会社に査定を頼み、仲介か買取かを決める
  3. 売買契約と引き渡し:特例を使うなら、その要件を契約内容に反映する
  4. 確定申告:売った年の翌年に、譲渡所得を申告する(原則として2月16日から3月15日まで)

期限のあるものは3つです。相続登記は3年以内、空き家の3,000万円特別控除(空き家の売却特例)は2027年12月31日までで、かつ相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却が対象です(2026年10月時点)。相続税を納めた人の取得費の加算の特例は、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの売却が対象です。

2つの特例は、同じ家について一緒には使えません。売買契約の前に、どちらを使うかを税理士と確かめます。

この記事の目次
  1. 相続した実家を売るまでの流れと、守るべき期限は?
  2. 売る前に、なぜ相続登記が必要?
  3. 仲介と買取、どちらで売ればいい?
  4. 実家を売ったら、税金はどう計算する?
  5. 空き家の3,000万円特別控除は、どんな家で使える?
  6. 相続税を納めた場合の「取得費の加算の特例」とは?
  7. 売れにくい実家は、どうすればいい?
  8. 査定を取るときは、何を比べればいい?
  9. 相談先はどこ?
  10. よくある質問
  11. 出典

相続した実家を売るまでの流れと、守るべき期限は?

この章のポイント

  • 相続登記→査定→売り方の選択→契約→引き渡し→確定申告
  • 期限は相続登記・空き家の売却特例・取得費の加算の特例
  • 確定申告は売った年の翌年

流れは次のとおりです。かかる期間は、相続人の人数、遺産分割の話し合い、物件の状態や地域で大きく変わるため、この記事では一律の目安は示していません。

  1. 相続登記遺産分割を話し合い、戸籍などを集めて、名義変更(相続登記)を申請します。相談先は司法書士、法務局です。
  2. 査定複数の不動産会社に価格を出してもらいます。
  3. 売り方の選択仲介で買主を探すか、不動産会社に買い取ってもらうかを、きょうだいで決めます。
  4. 売却活動・契約仲介では広告や内覧、買取では条件の交渉をします。東急リバブルの解説では、仲介は物件の条件や市況によって数か月以上かかることもあり、買取は条件が合えば1週間から1か月程度で現金化できる場合もあるとしています。
  5. 引き渡し代金を受け取り、鍵を引き渡します。家財(残置物)を撤去するかどうかは、売買契約の条件で決めます。
  6. 確定申告売った年の翌年に、譲渡所得を申告します。確定申告の期間は、原則として翌年2月16日から3月15日までです(国税庁 No.2020)。相談先は税理士、税務署です。

期限があるのはどの手続き?

相続した実家の売却には、次の期限があります。早いものから確かめておくと、特例の使い忘れを防げます。

相続登記の申請

相続の開始と不動産の取得を知った日から3年以内

  • 2024年4月1日より前の相続で、まだ登記していない場合は2027年3月31日まで(取得を知った日が2024年4月以降なら、その日から3年以内)
  • 根拠:法務省「相続登記の申請義務化について」

空き家の3,000万円特別控除(空き家の売却特例)

2027年12月31日までで、かつ相続開始から3年を経過する日の属する年の12月31日までの売却

  • たとえば2026年3月の相続なら、本来は2029年12月31日までですが、特例の対象は2027年12月31日までの売却のため、現行の期限では2027年12月31日までに売る必要があります(2026年10月時点)
  • 根拠:国税庁 No.3306

相続財産を譲渡した場合の取得費の加算の特例

相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までの売却

  • 相続税の申告期限は、亡くなったことを知った日(通常は死亡の日)の翌日から10か月以内です(国税庁 No.4205)
  • 根拠:国税庁 No.3267

譲渡所得の確定申告

売った年の翌年の確定申告期間(原則として2月16日から3月15日まで)

  • 根拠:国税庁 No.2020

期限の数え方や特例の当てはめは、家ごとに事情が異なります。最終的な判断は、税理士・司法書士などに相談してください。

売る前に、なぜ相続登記が必要?

この章のポイント

  • 名義が亡くなった親のままでは売れない
  • 相続登記は2024年4月から義務。期限は3年以内
  • 相続人申告登記では売却の準備にならない

名義が親のままでは売れません

法務省の「相続登記の申請義務化に関するQ&A」では、「相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、相続登記をする必要があります」と説明されています。

登記簿の名義が亡くなった親のままでは、買主へ名義を移せないためです。売却を考えたら、まず相続登記を済ませることが出発点になります。

2024年4月から、相続登記は義務になりました

法務省によると、相続登記の申請は2024年(令和6年)4月1日から義務になっています。要点は次のとおりです。

項目内容(法務省の説明)
申請の期限相続の開始と、不動産の所有権を取得したことを知った日から3年以内
遺産分割をした場合遺産分割が成立した日から3年以内に、その内容を踏まえた登記を申請
2024年4月より前の相続対象になる。2027年(令和9年)3月31日までに申請(取得を知った日が2024年4月以降なら、その日から3年以内)
申請しなかった場合正当な理由なく申請を怠ると、10万円以下の過料の対象

法務省のQ&Aでは、「正当な理由」の例として、相続人が極めて多く戸籍などの収集に時間がかかる場合や、遺言の有効性や遺産の範囲が相続人の間で争われている場合などが挙げられています。

きょうだいで話がまとまらないときの「相続人申告登記」

3年以内に遺産分割がまとまりそうにない場合は、「相続人申告登記」という仕組みがあります。法務省は、相続人が申請義務を簡易に果たせるように設けた登記だとしています。

ここに注意

法務省のQ&Aでは、相続人申告登記は「不動産についての権利関係を公示するものではなく、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には相続登記をする必要があることに留意が必要です」とされています。

相続人申告登記は期限への対応で、売却の準備にはなりません。売ると決めたら、誰が取得するかをきょうだいで決めて、相続登記まで進めます。

登記の方法や遺産分割協議書の作り方は、家族の状況で変わります。最終的な判断は、司法書士などに相談してください。

仲介と買取、どちらで売ればいい?

この章のポイント

  • 仲介は買主を探す方法、買取は不動産会社に売る方法
  • 800万円以下の空き家は、仲介手数料が通常の上限を超えることがある(最大33万円)
  • 空き家の売却特例を使うなら、最初に不動産会社へ伝える

実家の売り方は、大きく「仲介」と「買取」の2つです。仲介は不動産会社に買主を探してもらう方法、買取は不動産会社そのものに買ってもらう方法です。

下の比較のうち、価格・期間・責任・手数料は、東急リバブルの解説(2025年9月26日更新)の記載によります。

買主

  • 仲介:個人など一般の買主
  • 買取:不動産会社

価格

  • 仲介:市場の相場で買主を探す
  • 買取:東急リバブルの解説では、市場価格の7〜9割程度が一般的で、仲介よりも低くなる傾向がある

売れるまでの期間

  • 仲介:物件の条件や市況によっては、数か月以上かかることもある
  • 買取:条件が合えば1週間から1か月程度で現金化できる場合もある

仲介手数料

  • 仲介:売買契約が成立すると支払う(上限は国土交通省の告示で決まっている)
  • 買取:不動産会社との直接取引のため、仲介手数料はかからない

契約不適合責任(引き渡し後に見つかった不具合などの責任)

  • 仲介:売主が負う可能性がある
  • 買取:免責となるケースが多い(東急リバブルの解説)

家財(残置物)

  • どちらの場合も、残したまま引き渡せるかは契約の条件しだい。会社ごとに確かめる

向いている例

  • 仲介:立地や状態がよい、売却を急がない、きょうだいで時間をかけて相談できる
  • 買取:築年数が古い、遠方で内覧の立ち会いが難しい、早く現金化したい

遠方の実家を仲介で売る場合は、売れるまでの間、内覧の対応や家の管理、固定資産税の負担が続きます。価格・期間・手間のどれを優先するかを、きょうだいで先に話し合っておくと判断しやすくなります。買取価格の目安の読み方や、買取業者の免許番号と処分歴の調べ方は、空き家買取の仕組みと業者の選び方で整理しています。

仲介手数料の上限はどれくらい?

仲介手数料の上限は、国土交通省の告示で決まっています。売買代金(消費税を含まない額)のうち、200万円以下の部分は5.5%、200万円を超え400万円以下の部分は4.4%、400万円を超える部分は3.3%です(不動産会社が消費税の課税事業者の場合。消費税を含んだ率)。

2024年7月1日からは、代金が800万円以下の「低廉な空家等」について、不動産会社が通常の上限を超えて、33万円(30万円の1.1倍)まで依頼者から報酬を受け取れる特例があります。国土交通省の資料では、媒介契約を結ぶ際にあらかじめ、その範囲内で報酬額を依頼者に説明し、合意する必要があるとしています。

この特例は手数料を安くするものではなく、価格の低い実家では、売る側が払う仲介手数料が通常の計算より増える場合があります。媒介契約の前に金額を確かめてください。

空き家の売却特例を使うなら、売り方と契約内容を先に決めます

後で説明する空き家の3,000万円特別控除は、「家を残して売る」「取り壊してから土地を売る」「売った後に買主が耐震改修や取壊しをする」のどれかで要件が変わります。

仲介・買取のどちらでも、特例を使いたいことを不動産会社に最初に伝えておくと、契約書の特約まで含めて準備しやすくなります。

売買契約の内容や、どちらの売り方が合うかの最終的な判断は、不動産会社の説明を比べたうえで、税理士・弁護士などにも相談してください。

実家を売ったら、税金はどう計算する?

この章のポイント

  • 税金がかかるのは、売った金額ではなく譲渡所得
  • 取得費が分からなければ、売った金額の5%にできる
  • 親の取得時期を引き継ぐため、長期になることがある

税金がかかるのは「もうけ(譲渡所得)」の部分です

不動産を売ったときの税金は、売った金額の全体ではなく、もうけにあたる「譲渡所得」にかかります。国税庁 No.1440 の計算式は次のとおりです。

収入金額 −(取得費+譲渡費用)− 特別控除額 = 課税譲渡所得金額

用語意味(国税庁の記載)
収入金額実家を売った金額
取得費買い入れたときの購入代金や購入手数料など。建物は、購入代金などから所有期間中の減価償却費相当額を差し引いた額(No.3252・No.3258)
譲渡費用売るために直接かかった費用。仲介手数料、売主が負担した印紙税、土地を売るために建物を取り壊した費用など。修繕費や固定資産税など、維持・管理の費用は含まれない(No.3255)
特別控除額空き家の3,000万円特別控除などの特例を使う場合の控除額

相続した実家の取得費は「親が買ったときの金額」をもとにします

国税庁 No.3270 によると、相続で取得した土地や建物の取得費は、亡くなった親(被相続人)が買い入れたときの購入代金や購入手数料などをもとに計算します。また、業務に使われていない土地や建物なら、相続人が支払った登記費用や不動産取得税も取得費に含まれます。

親が買ったときの売買契約書や領収書は、取得費を計算する資料になります。実家を片付けるときは、捨てずに保管しておきます。

取得費が分からないときは「売った金額の5%」にできます

先祖から受け継いだ土地や、買った時期が古くて取得費が分からない場合は、売った金額の5%を取得費にできます(国税庁 No.3258)。実際の取得費が5%を下回る場合も、5%にできます。たとえば3,000万円で売った場合は150万円です。

ただし、この5%の方法を使う場合は、相続人が支払った登記費用などを取得費に含めることはできません(国税庁 No.3270)。取得費が小さいと譲渡所得が大きくなるため、次の章の特例を使えるかどうかが大切になります。

所有期間が5年を超えるかどうかで、税率が変わります

譲渡所得は、売った年の1月1日時点の所有期間が5年を超えるかどうかで、「長期」と「短期」に分かれます(国税庁 No.3202)。

相続した不動産は、親が取得した時期をそのまま引き継ぎ、親が取得した時から数えます(国税庁 No.3270)。親が長く住んでいた家なら、相続の直後に売っても長期になることがあります。

区分所有期間(売った年の1月1日時点)所得税住民税
長期譲渡所得5年を超える15%5%
短期譲渡所得5年以下30%9%

このほか、所得税額に2.1%を掛けた復興特別所得税がかかります(国税庁 No.3208・No.3211、令和8年4月1日現在)。2026年中の売却では、これを含めると合計の税率は長期が20.315%、短期が39.63%です(国税庁の税率から計算)。

2027年以後の税率:防衛特別所得税が加わり、合計は変わらない

令和8年度税制改正で、防衛特別所得税が創設されました。2027年(令和9年)1月1日以後は、防衛特別所得税1%と復興特別所得税1.1%(2.1%から引下げ)がかかり、国税庁は、合計の2.1%は変わらないと説明しています(「防衛特別所得税及び復興特別所得税(源泉徴収関係)Q&A」令和8年5月)。

この説明は源泉徴収についてのQ&Aによるものです。2027年以後に売った場合の確定申告での具体的な扱いは、申告の時点の国税庁の案内で確かめてください。

ここでの説明は一般的な考え方です。実際の税額は、取得費の資料の有無や特例の選び方で変わります。最終的な判断は、税理士などに相談してください。

空き家の3,000万円特別控除は、どんな家で使える?

この章のポイント

  • 原則として、昭和56年5月31日以前に建てられ、親が一人で住んでいた家が対象(老人ホーム入所の場合も一定の要件で対象)
  • 控除は最高3,000万円。相続人3人以上なら2,000万円まで
  • 2027年12月31日までの売却。確定申告と市区町村の確認書が必要

原則として親が一人で住んでいた家を相続して売った場合(老人ホームなどへの入所で空き家になっていた場合も含みます)、一定の要件を満たすと、譲渡所得から最高3,000万円を控除できます。国税庁 No.3306(令和8年4月1日現在法令等)の記載をもとに、主な要件を整理します。

対象になる売却の期間

2016年(平成28年)4月1日から2027年(令和9年)12月31日までの売却

家の要件

  • 相続開始の直前に、亡くなった親が住んでいた家であること
  • 昭和56年5月31日以前に建築されたこと
  • 区分所有建物登記がされていないこと
  • 相続開始の直前に、亡くなった親以外に住んでいた人がいなかったこと

売る人

相続または遺贈で家や敷地を取得した相続人(包括受遺者を含む)

売る時期

相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日まで

売却代金

1億円以下

同じ親から相続した家や敷地を分けて売った場合や、ほかの相続人が売った分も合算して判定。合計が1億円を超えたら、その売却の日から4か月以内に修正申告と納税が必要

買主

親子や夫婦など、特別の関係がある人への売却ではないこと

控除額

最高3,000万円

2024年1月1日以後の売却で、家と敷地を相続した相続人が3人以上なら2,000万円まで

手続き

確定申告が必要

家の所在地の市区町村長が発行する「被相続人居住用家屋等確認書」、売却代金が1億円以下であることを示す売買契約書の写しなどを添付

親が老人ホームなどに入所していて、相続開始の直前に実家に住んでいなかった場合でも、一定の要件を満たせば対象になります(国税庁 No.3307。要件は「よくある質問」で整理しています)。

どんな売り方なら対象になりますか

国税庁の記載では、対象になる売り方は次の3つです。イとハでは、家と敷地が相続の時から売却の時まで、事業・貸付け・居住に使われていないことが要件です。ロでは、家は相続の時から取壊し等の時まで、敷地は相続の時から売却の時まで、事業・貸付け・居住に使われていないことが要件です。

イ:家を残して売る(家だけ、または敷地とともに)

売却の時に、一定の耐震基準を満たしていること

ロ:家を取り壊してから敷地を売る

家の全部を取り壊した後に敷地を売ること

取壊し等の時から売却の時まで、建物や構築物の敷地に使われていないことも要件

ハ:売った後に、耐震改修か取壊しをする(2024年1月1日以後の売却)

売却した年の翌年2月15日までに、一定の耐震基準を満たすか、家の全部を取り壊すこと

2024年1月から変わった点

  • 売った後に耐震改修や取壊しをする場合(上のハ)も対象になりました。期限は、売却した年の翌年2月15日までです。
  • 家と敷地を相続した相続人が3人以上の場合、控除額は2,000万円までになりました。
  • 市区町村の確認書で確認する事項に「相続人の数」が加わりました(2024年1月1日以後の売却)。

ここに注意

ハの方法は、買主が売却後に工事をする場合に使われます。京都市の「よくある質問と答え」(令和6年6月時点)では、工事の完了期限は要件として定められているため、売主に非がない事由で工事が完了しなかった場合でも、特例の対象にならないとしています。

同じ資料では、売買契約のときに、売却した年の翌年2月15日までに家を耐震基準に適合させるか取り壊すことを定める特約を設けることが望ましいとしています。

確認書は、実家のある市区町村に申請します(京都市の例)

「被相続人居住用家屋等確認書」は、実家のある市区町村長が発行します。必要な書類や窓口は市区町村ごとに異なるため、実家のある市区町村の案内を確かめてください。たとえば京都市の案内と資料には、次のように書かれています。

窓口と出し方

京都市空き家相談窓口(都市計画局住宅室住宅政策課)

案内ページ(2026年4月3日更新)では郵送での提出を勧め、窓口に行く場合は事前に電話で予約するよう求めている

主な書類

  • 申請書
  • 亡くなった親の除票住民票、相続人全員の住民票(マイナンバーの記載がないもの)
  • 家と敷地の登記事項証明書(閉鎖事項証明書を含む)の原本
  • 売買契約書の全ページの写し など

空き家だったことを示す書類

電気・水道・ガスの使用中止を示す書類

例:電気需給契約証明書(関西電力)、休止清算結果についてのお知らせ(京都市上下水道局)、ガス供給終了証明書(大阪ガス)

発行までの期間

申請書の受理から10日ほど(閉庁日を除く)

確定申告の時期(1〜3月)は申請が多く、さらに時間がかかる場合がある

注意点

確認書が発行されても、特例が適用されない場合がある

適用できるかどうかは、申告先の税務署に相談するよう案内されている

特例の要件は細かく、1つ欠けると適用されません。最終的な判断は、売買契約の前に税理士・税務署などに相談してください。

相続税を納めた場合の「取得費の加算の特例」とは?

この章のポイント

  • 相続税を納めた人が対象。相続税の一部を取得費に加える
  • 相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売る
  • 空き家の売却特例とは一緒に使えない

相続税を納めた人が、相続した財産を一定の期間内に売った場合、納めた相続税のうち一定額を、売った財産の取得費に加えられる特例です(国税庁 No.3267、令和8年4月1日現在法令等)。要件は次の3つです。

  • 相続や遺贈で財産を取得した人であること
  • その財産を取得した人に、相続税が課税されていること
  • 相続開始のあった日の翌日から、相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに売っていること

取得費に加える額は、その人の相続税額のうち、売った財産の相続税評価額の割合に応じた額で、財産ごとに計算します。この額が、特例を使わずに計算した譲渡益を超える場合は、譲渡益に相当する額が上限です。具体的な算式は国税庁 No.3267 に載っています。

使うには、確定申告書に「相続財産の取得費に加算される相続税の計算明細書」などを添えて、税務署に出します。

2つの特例は、同じ家について一緒には使えません

国税庁 No.3306 では、空き家の3,000万円特別控除の要件として、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例や収用等の場合の特別控除など他の特例の適用を受けていないこと」を挙げています。

どちらが有利かは、相続税の額、売却額、取得費などで変わります。次は、検討の入り口にする例です。

状況の例検討する特例
昭和56年5月31日以前に建てられ、原則として親が一人で住んでいた家(老人ホーム入所の場合も一定の要件で対象)空き家の3,000万円特別控除
相続税がかかり、マンションや新しい家などで空き家の売却特例の要件に当てはまらない取得費の加算の特例
両方の要件に当てはまる税理士に試算してもらって選ぶ

どちらの特例を選ぶかで税額が変わります。最終的な判断は、売買契約の前に税理士などに相談してください。

売れにくい実家は、どうすればいい?

この章のポイント

  • 再建築不可・共有・遠方などは、仲介で買主が見つかりにくいことがある
  • 共有の家を丸ごと売るには、原則として共有者全員がそろって売る形になる
  • 土地だけ残るなら、相続土地国庫帰属制度も選択肢

立地や権利関係によっては、仲介では買主が見つかりにくい実家もあります。ケースごとの課題と選択肢の例を整理します。

再建築不可

接道義務を満たさず、原則として建て替えができない

  • 接道義務:建築物の敷地は、建築基準法上の道路(原則として幅員4m以上。地域によって6m)に2m以上接しなければならない(建築基準法第42条・第43条)。幅員4m未満でも、特定行政庁が指定した道は道路とみなされる(同法第42条2項)
  • 選択肢:隣地の所有者への売却、訳あり物件を扱う買取会社への売却

共有名義

きょうだいで共有にすると、家全体を売るには、原則として共有者全員がそろって持分を売る形になる

  • 選択肢:話し合いで売却の方針をそろえる、自分の持分だけを売る、売却代金を分ける前提で遺産分割(換価分割)する

遠方にある

内覧の立ち会いや管理が難しい

  • 選択肢:買取、地元の不動産会社への依頼

家財が多い・傷みが大きい

片付けや修繕の費用がかかる

家を除いた土地が売れない・使い道がない

買い手がつかず、管理と固定資産税だけが続く

  • 選択肢:相続土地国庫帰属制度の利用を検討する

共有の家を丸ごと売るには、原則として共有者全員がそろって持分を売る形になります。例外として、共有者の一部の所在が分からない場合は、裁判所の決定により、申立てをした共有者にその人の持分を譲渡する権限を与える制度があります(民法262条の3)。法務省の資料では、ほかの共有者全員が持分の全部を同じ第三者に譲渡することが条件で、不動産全体を第三者に譲渡するケースでのみ使えると説明しています。所在が分からない人の持分が遺産分割前の相続財産の場合は、相続開始から10年を経過するまで、この裁判はできません(同条2項)。

相続土地国庫帰属制度とは

相続や相続人への遺贈で取得した土地を、一定の要件を満たせば国に引き取ってもらえる制度で、2023年(令和5年)4月27日に始まりました。法務省によると、主な条件は次のとおりです。

  • 建物がある土地は申請できません(申請するには解体が必要です)。
  • 担保権や使用収益権が設定されている土地、他人の利用が予定されている土地、土壌汚染されている土地、境界が明らかでない土地や所有権の存否・範囲に争いがある土地も申請できません。
  • 共有の土地は、共有者全員で申請します。
  • 審査手数料は土地1筆につき14,000円で、取下げ・却下・不承認でも返還されません。
  • 承認されると、審査手数料とは別に負担金を納めます。負担金は、土地の種目ごとに10年分の標準的な管理費用を考慮して算定されます。

売却・買取・国庫帰属のどれが合うかは、実家の状態と家族の考え方しだいです。実家全体の片付けや手放し方の順番は、実家じまいは何から始める?で整理しています。仏壇の処分など、ほかの実家じまいの記事は実家じまいのページにまとめています。

共有持分の売却や遺産分割の方法は、権利関係で扱いが変わります。最終的な判断は、司法書士・弁護士などに相談してください。国庫帰属の相談は、土地のある都道府県の法務局・地方法務局の本局で受け付けています(支局・出張所では受け付けていません)。制度の要件や負担金の計算例は、相続土地国庫帰属制度の使い方で整理しています。

査定を取るときは、何を比べればいい?

この章のポイント

  • 査定は複数社に頼み、金額の根拠を比べる
  • 登記事項証明書・納税通知書・建築年の資料・購入時の契約書をそろえる
  • 専任媒介・専属専任媒介の有効期間は3か月まで

査定前にそろえておく資料

  • 登記事項証明書(相続登記後の名義になっているか)
  • 固定資産税の納税通知書(評価額や面積の確認)
  • 建築年が分かる資料(空き家の売却特例の「昭和56年5月31日以前」の判定にも使う)
  • 親が買ったときの売買契約書・領収書(取得費の計算に使う)
  • 間取り図、リフォームの記録

遠方の実家では、地元の不動産会社を1社ずつ探す手間がかかります。不動産の一括査定サービスを使うと、物件の情報を一度入力するだけで、複数の会社に査定を頼めます。

査定の結果を比べるときのチェックポイント

確かめること見るポイント
査定額の根拠近くの成約事例など、金額の理由を説明してくれるか
仲介と買取の両方の提案買取の場合の価格も出してもらえるか
空き家の売却特例への理解確認書の取得や、取壊し・耐震改修の特約に対応できるか
遠方への対応鍵の預かり、内覧の立ち会いの代行、オンラインでの報告ができるか
媒介契約の種類と期間一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の違い。専任媒介契約の有効期間は3か月を超えることができない(宅地建物取引業法第34条の2第3項)

確かめておくこと

査定額がいちばん高い会社が、その金額で売ってくれるとは限りません。根拠の説明を比べてください。

一括査定を申し込むと、複数の会社から連絡が来ます。連絡方法の希望を書ける欄があれば、伝えておくと負担が減ります。

買取の提示で決断を急がされた場合は、いったん持ち帰り、きょうだいや専門家と相談してから判断します。

契約の前に、売却代金から差し引かれる費用(仲介手数料、解体費、残置物の処分費など)と、手元に残る金額の見込みを確かめておきます。

媒介契約や売買契約の内容に不安がある場合、最終的な判断は弁護士・司法書士などに相談してください。

相談先はどこ?

相談したいこと相談先
相続登記、相続人申告登記、遺産分割協議書司法書士、法務局
譲渡所得の計算、特例の選び方、確定申告税理士、税務署
被相続人居住用家屋等確認書実家のある市区町村の担当課(京都市は空き家相談窓口)
共有持分、相続人どうしの争い弁護士
査定、売り方の選択不動産会社(複数社を比べる)
相続土地国庫帰属制度土地のある都道府県の法務局・地方法務局の本局

この記事は一般的な説明です。ご自身のケースでの手続きや税額は、税理士・司法書士などに相談してください。

よくある質問

Q1. 親が老人ホームに入っていて、実家が空き家だった場合も、空き家の売却特例は使えますか?

一定の要件を満たせば対象になります(国税庁 No.3307)。主な要件は次のとおりです。

  • 家に住まなくなる直前に、親が要介護認定・要支援認定などを受けていて、有料老人ホームや特別養護老人ホーム、サービス付き高齢者向け住宅などに入っていたこと
  • 住まなくなった時から相続開始の直前まで、引き続き親の物品の保管などに使われ、事業・貸付け・ほかの人の居住に使われていないこと
  • 入所した時から相続開始の直前まで、親が主に生活していた場所が、その老人ホームなどであること

家そのものの要件(昭和56年5月31日以前の建築など)も必要です。最終的な判断は、市区町村の担当課と税理士・税務署に相談してください。

Q2. 解体費や固定資産税は、売ったときの譲渡費用として差し引けますか?

国税庁 No.3255 では、土地などを売るために建物を取り壊したときの取壊し費用は譲渡費用に含まれるとしています。一方で、修繕費や固定資産税など、資産の維持・管理のためにかかった費用は譲渡費用に含まれません。

家財の処分費など、国税庁の例示にない費用の扱いは、税理士・税務署に確かめてください。

Q3. 売っても利益が出なかった場合、確定申告は必要ですか?

空き家の3,000万円特別控除や取得費の加算の特例を使う場合は、確定申告が必要です(国税庁 No.3306・No.3267)。

特例を使わない場合の申告の要否は、ほかの所得の状況などでも変わります。最終的な判断は、税務署・税理士などに相談してください。

Q4. 相続した実家がマンションの場合、空き家の売却特例は使えますか?

空き家の売却特例は、区分所有建物登記がされている建物は対象外です(国税庁 No.3306)。マンションの1室を相続した場合は、相続税を納めていれば取得費の加算の特例を使えるかどうかを確かめます。

どの特例が使えるかの最終的な判断は、税理士などに相談してください。

出典

執筆・編集:しまい支度編集部(編集方針)

最終確認日:2026年10月27日