※2026年10月時点の情報です。
結論:生前整理は、何から始めればいい?
この記事では、生前整理でやることを「物」「お金と書類」「意思」の3つに分けて考えます。手をつける順番の目安は、次のとおりです。
- お金と書類の一覧づくり:紙1枚から始められる
- デジタルの契約の書き出し:スマホのロック解除方法、ネット銀行、サブスク
- 物の整理:量が多いので、範囲を区切って少しずつ
- 意思を形にする:エンディングノート、必要なら遺言
親と離れて暮らしている場合は、物の片付けより先に「どこに何があるか」の一覧を作ると、短い帰省でも進めやすくなります。物は量が多く、1回の帰省では終わりにくいためです。
費用の目安は、次のとおりです。
- 自筆の遺言書を法務局に預ける手数料:1通3,900円(法務省)
- 公正証書遺言の手数料:受け取る人ごとの財産の価額で決まります。たとえば1人分が1,000万円を超え3,000万円以下なら26,000円。全体の財産が1億円以下なら、13,000円の「遺言加算」がつきます(日本公証人連合会)
- エンディングノート:法務省と日本司法書士会連合会が作成したものを、無料でダウンロードできます
この記事の目次
「物」「お金と書類」「意思」で、それぞれ何をする?
この章のポイント
- 物は仕分け、お金と書類は一覧、意思はノートや遺言に
- デジタルの契約は見落としやすいので別に書き出す
デジタルの契約は「お金と書類」の一部ですが、通帳や郵便物がなく見落としやすいため、別に扱います。
物
残す・譲る・売る・処分するの仕分け。仏壇や写真の扱いを決める
- 費用がかかる場面:粗大ごみ手数料、業者への依頼、家電リサイクル料
- 相談先:自治体のごみの担当窓口、遺品整理・生前整理の業者、買取業者
お金と書類
口座・保険・証券・不動産・借入の一覧づくり。使っていない口座やカードの整理
- 費用がかかる場面:証明書の取得手数料など
- 相談先:金融機関、法務局(不動産)
お金と書類のうち、デジタルの契約
スマホのロック解除方法の残し方、ネット上の契約の書き出し
- 費用がかかる場面:ほとんどかからない
- 相談先:各サービスの窓口
意思
エンディングノート、遺言、お墓や葬儀の希望
- 費用がかかる場面:遺言書の保管手数料、公正証書の手数料、専門家への報酬
- 相談先:法務局、公証役場、司法書士・弁護士・行政書士
実家全体の片付けを、どの場所から、どんな順番で進めるかは実家の片付けはどこから?で整理しています。
物の整理は、どう進める?
この章のポイント
- 1回で終わる「1か所」ずつ区切って仕分ける
- 30万円を超える貴金属・骨とうなどの売却は非課税の対象外
- 訪問購入は書面を受け取ってから8日以内ならクーリング・オフ
1部屋ではなく「1か所」ずつ区切る
「押し入れの上段だけ」のように、1回で終わる範囲に区切ると続けやすく、親の負担も小さくなります。仕分けは次の4つです。
残す
毎日使う物、思い出の品のうち本人が選んだ物
注意:量を決めておく(「この箱に入るだけ」など)
譲る
着物、家具、趣味の道具
注意:形見分けにあたる物は、きょうだいにも先に声をかける
売る
貴金属、ブランド品、骨とう品、まだ使える家電
注意:買取は古物商の許可を受けた業者に。訪問買取の注意は下記
処分する
古い寝具、壊れた家具、使っていない日用品
注意:粗大ごみの申込方法と手数料は、自治体ごとに異なる
写真・手紙・仏壇は、急いで処分しない
写真や手紙は本人にとっての意味が大きく、家族のあいだで意見が分かれることもあります。「処分する」箱には入れず、最後に本人が選ぶ時間をとります。
仏壇は、閉眼供養をしてから処分する方法と、業者に引き取ってもらう方法があります。費用と手順は仏壇の処分方法と費用で整理しています。
買い取ってもらうとき、何に気をつける?
生前整理で出た物を売るときは、税金と訪問購入の2点を押さえておきます。
- 税金:家具、じゅう器、通勤用の自動車、衣服などの生活に通常必要な動産を売った所得には、所得税がかかりません。ただし、貴金属や宝石、書画、骨とうなどで1個または1組の価額が30万円を超えるものは、この非課税の扱いから除かれます(国税庁タックスアンサーNo.3105、令和8年4月1日現在法令等)。
- 自宅に来てもらう買取(訪問購入):特定商取引法は、勧誘を頼んでいない人に対して、購入業者が自宅など営業所以外の場所で勧誘することを禁じています(第58条の6)。申込みや契約の書面を受け取った日から数えて8日以内なら、書面または電磁的記録で申込みの撤回や契約の解除(クーリング・オフ)ができます(第58条の14)。その間は、品物の引渡しを拒むこともできます(第58条の15)。
困ったときは、消費者ホットライン「188」に電話すると、地方公共団体の消費生活センターや消費生活相談窓口を案内してもらえます(消費者庁)。
高額な品を売るときの税金の扱いは、税務署でも確認できます。最終的な判断は、税理士などに相談してください。
自分でやるか、業者に頼むか
本人と家族で進める
向いているケース:時間に余裕がある、実家に通える
- 費用:粗大ごみ手数料など
- 注意点:体力が要る。きょうだいで役割を分けておく
一部だけ業者に頼む(大型家具の搬出など)
向いているケース:仕分けは家族でできるが、運び出しが難しい
- 費用:作業の範囲で決まる
- 注意点:何を任せるかを見積書に書いてもらう
まとめて業者に頼む
向いているケース:遠方で通えない、物量が多い、期限がある
- 費用:間取りと物量で大きく変わる
- 注意点:一般廃棄物収集運搬業の許可・古物商の許可、追加料金の条件を確かめる
買取を組み合わせる
向いているケース:売れる物が多い
- 費用:買取額で作業費の一部を相殺できることがある
- 注意点:作業費と買取額を分けて書いてもらう
業者に頼むと、費用はいくらかかる?
生前整理の作業は、仕分け・搬出・処分という点で遺品整理と中身が近いため、費用の目安は遺品整理の相場が参考になります。
間取り別の相場表と、費用が変わる条件、見積もりで確かめることは遺品整理の費用相場に、許可の確かめ方と見積もりの取り方は遺品整理業者の選び方にまとめています。
お金と書類は、何を一覧にすればよい?
この章のポイント
- 金融機関名・支店名・種類がわかれば一覧になる
- 相続時の口座照会はマイナンバーを届け出た口座だけ
- 相続登記は知った日から3年以内。怠ると過料の対象
亡くなったあとに家族が困る場面の一つが、「口座や保険がどこにあるかわからない」ことです。次の項目を、親と一緒に書き出していきます。
通帳や証券そのものを預かる必要はありません。金融機関名・支店名・種類がわかれば、一覧になります。暗証番号やパスワードをそのまま書いた紙は、人目にふれると危険です。書き残すなら、次の章で紹介する国民生活センターの方法などを参考にしてください。
預貯金
金融機関名、支店名、口座の種類
生前にしておくと助かること:使っていない口座を解約してまとめる。口座にマイナンバーを届け出ておく(下記)
生命保険・医療保険
保険会社名、証券番号、受取人
生前にしておくと助かること:保険証券の保管場所を家族に伝える
証券・投資信託
証券会社名、ネット取引の有無
生前にしておくと助かること:ネット証券はデジタルの一覧にも書く
不動産
所在地、名義(共有かどうか)
生前にしておくと助かること:登記の名義が亡くなった祖父母のままになっていないか確かめる
借入・ローン・保証
借入先、残高の目安、保証人になっているか
生前にしておくと助かること:家族が相続の判断(承認・放棄)をするための材料になる
クレジットカード・公共料金
カード会社名、引き落としの口座
生前にしておくと助かること:使っていないカードを解約し、引き落とし口座をまとめる
口座・保険・不動産を、あとから探す手段はある?
一覧が不完全でも、あとから探す仕組みがあります。ただし、生前の準備が要るものもあります。
相続時の預貯金口座照会(預金保険機構)
相続人が金融機関に申し込むと、預金保険機構がマイナンバーを使って照会し、口座の情報(金融機関名、支店名、種類、口座番号など)を通知する
- 対象:被相続人が生前にマイナンバーを紐づけた口座に限る。残高は通知の対象外
- 申込先:預金保険機構が業務を委託した金融機関(取引のない金融機関でも可)。申込みは窓口など(方法は金融機関による)。マイナポータルからは申し込めない
- 手数料:申込み1件につき5,060円(税込)。照会の結果、情報が得られなかった場合も原則返還されない
- 期間:通知まで1か月程度。照会できるのは死後10年まで
- 生前にしておくこと:本人が金融機関で、口座にマイナンバーを届け出ておく
出典:預金保険機構「相続時の預貯金口座照会」の利用規定・申込みの案内、デジタル庁「よくある質問:預貯金口座への付番について」
生命保険契約照会制度(生命保険協会)
死亡や認知判断能力の低下などで契約の手がかりがないとき、協会の加盟会社全社に契約の有無を照会できる
- 対象:照会の受付日に有効に続いている個人保険契約(財形保険、支払いが始まった年金保険、保険金等が据え置きの契約などは除く)
- 費用:利用料のほか、公的書類や医師の診断書などの取得費用がかかる。利用料の額は、協会のページで照会事由ごとの手続きを確かめる
- 生前にしておくこと:保険証券の保管場所を家族に伝えておく
所有不動産記録証明制度(法務局)
登記名義人や、その相続人などが、名義人の所有する不動産の一覧を証明書で受け取れる
- 手数料(検索条件1件・1通あたり):書面請求(収入印紙で納付)1,600円、オンライン請求の郵送交付1,500円、窓口交付1,470円
- 注意:検索条件と異なる氏名・住所で登記されている不動産や、登記簿がコンピュータ化されていない不動産は一覧に出ない
- 生前にしておくこと:名義が古いままの土地がないかを、本人が元気なうちに確かめられる
実家の名義は、なぜ確かめておく?
2024年4月1日から、相続登記の申請が義務になりました。相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内に申請する必要があり(不動産登記法第76条の2)、正当な理由なく申請しないと10万円以下の過料の対象になります(同法第164条)。
法務省によると、法務局(登記官)が裁判所に過料の通知をするのは、期間を定めて申請するよう催告したのに、正当な理由なくその期間内に申請がされない場合に限られます。正当な理由の例として、相続人が極めて多く戸籍の収集などに時間がかかる場合、遺言の有効性や遺産の範囲が争われている場合、申請する人に重病などの事情がある場合などが挙げられています。
2024年3月以前に始まった相続も対象です。期限は2027年3月31日で、取得を知ったのが2024年4月以降ならその日から3年です(法務省)。
登記の名義が亡くなった祖父母のままだと、その相続人全員が関係するため、話し合う相手が増えることがあります。固定資産税の納税通知書などを見ながら、名義を確かめておきます。実家を売ることになったときの流れと税金は相続した実家を売る流れと税金にまとめています。
口座や不動産の相続の扱いは、家族構成や財産の内容で変わります。最終的な判断は、弁護士・司法書士・税理士などに相談してください。
デジタル遺品は、どう整理する?
この章のポイント
- パスワードがわからないと、第三者のロック解除は難しい
- サブスクは解約の手続きをしない限り請求が続く
- 修正テープで隠したメモなどで解除方法を残す
国民生活センターは2024年11月20日、「今から考えておきたい『デジタル終活』」という注意喚起を公表しました。紹介されている相談事例は、次のようなものです。
- 故人が利用していたネット銀行の手続きをしたいが、スマホが開けず、契約先がわからない
- コード決済サービス事業者の相続手続きが、1か月以上たっても終わらない
- 故人が契約したサブスクの請求を止めたいが、IDとパスワードがわからない
同センターは、故人のスマホやパソコンのパスワードがわからない場合、第三者がロックを解除するのは困難だとしています。サブスクは、契約者本人が亡くなっても、解約の手続きをしない限り請求が続きます。
種類別に、生前にしておくこと
スマホ・パソコン
ロック解除の方法を、家族が必要なときだけ見られる形で残す(下記)
家族が困ること:ロックが解除できず、中の情報(連絡先、契約、写真)が見られない
ネット銀行・ネット証券
サービス名をお金の一覧に書いておく
家族が困ること:通帳や郵便物がなく、口座があること自体に気づけない
コード決済・電子マネー
残高を必要以上に入れておかない。サービス名を一覧に書く
家族が困ること:残高があっても、相続手続きに時間がかかることがある
サブスク(動画、音楽、アプリ、クラウド保存)
使っていない契約を解約し、残す契約は一覧にする
家族が困ること:解約しない限り請求が続く
SNS・メール
亡くなったあと、どうしてほしいかをノートに書く
家族が困ること:アカウントが残り続ける
スマホのロック解除方法は、どう残す?
国民生活センターは、スマホやパソコンのパスワードを日ごろから共有しておくことは、思わぬトラブルにもなりうると注意しています。そのうえで、次のような方法を紹介しています。
- 名刺大の紙にパスワードなどを書き、パスワードの部分に修正テープを2〜3回重ねて貼って隠しておく。家族は必要なときに、コインなどで削って読む
- パスワードそのものではなく、家族にだけわかる合言葉(「パートナーの誕生日」など)を書いておく
- 誰かが削ってパスワードを見たことに気づいたら、すぐにパスワードを変えるなどして対処する
アカウントの保有者が亡くなった場合に、誰が情報にアクセスできるかを設定できるサービスも紹介されています。Appleの「故人アカウント管理連絡先」と、Googleの「故人のアカウントに関するリクエスト」です。
ネット上の口座や残高の相続手続きは、サービスごとに異なります。各サービスの窓口で確かめたうえで、最終的な判断は弁護士・司法書士・税理士などに相談してください。
意思はどう残す?エンディングノートと遺言のちがい
この章のポイント
- エンディングノートには遺言のような法的効力はない
- 法務局で保管した遺言と公正証書遺言は検認が不要
- 法務局への保管の申請は1通3,900円。本人が予約して出向く
エンディングノートには、何を書く?
エンディングノートは、財産の一覧、医療や介護の希望、葬儀やお墓の希望、家族へのメッセージなどを、自由に書き残すノートです。
法務省と日本司法書士会連合会が作成した「エンディングノート 〜あなたに届け、わたしの想い〜」(2023年8月改訂)は、無料でダウンロードできます。主な記入欄は次のとおりです。
- わたし自身のこと(本籍、菩提寺、もしもの時の連絡先、家系図など)
- 不動産(所在地、共有名義人と持分、どう処理したいか)、預貯金、有価証券・株式、生命保険、借入金・ローン
- デジタルデータ(携帯電話・パソコンのログイン情報、メールやSNS、オンライン口座、有料サービスの契約状況)
- 介護・医療の希望、葬儀・お墓、家族へのメッセージ
後半には、相続登記、法定相続情報証明、遺言、自筆証書遺言書保管制度、成年後見制度の解説と、全国の司法書士会の一覧も載っています。デジタルデータの欄にはIDやパスワードを書く欄もあるため、書いたノートの保管場所には気をつけます。
ここに注意
このノートの中でも、エンディングノートには遺言のような法律的な効力はないと説明されています。財産の分け方を確実に残したい場合は、民法の方式に沿った遺言を作ります。
お墓をどうしたいか(今のお墓を継ぐか、墓じまいして永代供養などに移すか)も、ノートに書いておきたい項目です。墓じまいの流れは墓じまいの進め方と手続きで、墓じまいのあとの遺骨の行き先は墓じまい後の遺骨はどこへ?6つの行き先を比較で確認できます。
遺言には、どんな種類がある?
民法が定める普通の方式の遺言は、自筆証書、公正証書、秘密証書の3つです(民法第967条)。自筆証書遺言は、法務局に預けるかどうかで扱いが変わるため、4つに分けて比べます。
自筆証書遺言(自宅などで保管)
全文・日付・氏名を自分で書き、押印する(民法第968条)
- 財産目録:パソコンで作ってもよいが、各ページに署名・押印が必要
- 費用:ほとんどかからない
- 家庭裁判所の検認:必要(民法第1004条)
- 紛失・改ざんのおそれ:ある
自筆証書遺言(法務局で保管)
上と同じ方式で作り、本人が法務局(遺言書保管所)に出向いて預ける
- 費用:保管の申請1通3,900円
- 家庭裁判所の検認:不要(遺言書保管法第11条)
- 紛失・改ざんのおそれ:低い(原本は遺言者の死亡後50年間、画像データは150年間保管)
公正証書遺言
証人2人以上の立会いのもと、遺言の趣旨を公証人に口授して作成してもらう(民法第969条)
- 費用:財産の価額に応じた手数料+遺言加算(下記)
- 家庭裁判所の検認:不要(民法第1004条第2項)
- 紛失・改ざんのおそれ:低い(原本は公証役場で保管。電子化された原本は日本公証人連合会のシステムで保管)
秘密証書遺言
証書に署名・押印して封をし、同じ印で封印したうえで、公証人1人と証人2人以上の前に提出する(民法第970条)
- 費用:公証人の手数料13,000円(公証人手数料令第28条)
- 家庭裁判所の検認:必要(民法第1004条)。封印のある遺言書は、家庭裁判所で相続人などの立会いのもとで開封する
- 紛失・改ざんのおそれ:自分で保管するため、ある
検認は、相続が始まったあとに、遺言書の保管者や遺言書を見つけた相続人が家庭裁判所に請求する手続きです。相続人に遺言の存在と内容を知らせ、偽造・変造を防ぐためのもので、遺言が有効か無効かを判断する手続きではありません(裁判所)。
費用は、遺言書1通につき収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手です(郵便切手の額は裁判所ごとに異なります)。検認が不要な方式なら、家族の手続きが一つ減ります。
公正証書遺言の手数料は、いくら?
公正証書遺言の手数料は、公証人手数料令で、財産の価額に応じて決まっています。財産を受け取る人ごとに価額を出して手数料を求め、それらを合算します(日本公証人連合会)。主な価額の手数料は次のとおりです。
| 目的の価額 | 手数料 |
|---|---|
| 500万円を超え1,000万円以下 | 20,000円 |
| 1,000万円を超え3,000万円以下 | 26,000円 |
| 3,000万円を超え5,000万円以下 | 33,000円 |
| 5,000万円を超え1億円以下 | 49,000円 |
表は主な価額の抜粋です。500万円以下や1億円を超える場合を含む全段は、日本公証人連合会「手数料」のページで確認してください。
全体の財産が1億円以下のときは、これに13,000円の「遺言加算」がつきます。
公証人に、自宅や介護施設、病院などへ出張してもらうこともできます。この場合は公証人の日当(1日2万円、4時間以内なら1万円)と交通費がかかり、病床で作成したときは手数料が50%加算されることがあります。
未成年者、推定相続人、遺贈を受ける人、推定相続人や遺贈を受ける人の配偶者・直系血族などは証人になれません。適当な証人が見つからない場合は、公証役場で紹介してもらうこともできます(日本公証人連合会)。
法務局の自筆証書遺言書保管制度は、どう使う?
法務省の案内をもとに、手続きの要点をまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請できる法務局 | 遺言者の住所地・本籍地・所有する不動産の所在地のいずれかを管轄する遺言書保管所(2通目以降は、最初に申請した保管所) |
| 予約 | 必須 |
| 申請できる人 | 遺言者本人のみ(代理人による申請や郵送による申請はできない) |
| 持ち物 | 遺言書、保管申請書、本籍と筆頭者の記載がある住民票の写し等(マイナンバー・住民票コードの記載がないもの)、顔写真付きの官公署発行の身分証明書、手数料(収入印紙) |
| 手数料 | 保管の申請1件(遺言書1通)につき3,900円。保管の申請の撤回や、住所等の変更の届出は無料 |
| 用紙 | A4、片面のみ。余白は最低限、上5mm・下10mm・左20mm・右5mm。2枚以上ならページ番号を書く。ホチキスで綴じず、封筒も不要 |
| 保管期間 | 原本は遺言者の死亡後50年間、画像データは150年間 |
| 申請後に渡されるもの | 保管証(再発行できない) |
| 撤回 | 遺言者本人のみ、予約して原本を保管している保管所で。遺言書は返還される |
亡くなったあと、家族はどう知る?
- 指定者通知:遺言者が希望すれば、法務局が遺言者の死亡を確認したときなどに、あらかじめ指定した人(3名まで)へ、遺言書が保管されていることが通知されます。
- 関係遺言書保管通知:相続人などのうち誰かが遺言書を閲覧したり、遺言書情報証明書を受け取ったりすると、ほかの相続人などにも保管が通知されます。
相続が始まったあと、遺言書情報証明書(1通1,400円)は全国どこの遺言書保管所でも請求でき、郵送でも請求できます。モニターでの閲覧(1回1,400円)は全国の遺言書保管所で、原本の閲覧(1回1,700円)は原本を保管している保管所でのみできます。
ここに注意
法務局が確かめるのは、民法の自筆証書遺言の形式に合っているかという外形的な点だけです。遺言の内容の相談には応じず、保管された遺言書の有効性も保証しません。
余白に1文字でもはみ出していると書き直しが必要になり、「令和3年3月吉日」のような日付も認められません。
2026年6月の民法改正で、何が変わる?
2026年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第45号)が成立し、6月24日に公布されました。遺言については、次の2点が見直されます。
- 押印の任意化:自筆証書遺言、秘密証書遺言などの押印の要件をなくし、押印を任意にします。施行は、公布から1年を超えない範囲で政令で定める日です。
- 保管証書遺言の創設:パソコンなどで作った遺言のデータやプリントアウトを法務局に提供し、本人が対面かウェブ会議で遺言の全文を口述するなどして、法務局が保管する方式です。施行は、公布から3年を超えない範囲で政令で定める日です。
法務省のページ(2026年6月30日更新)には具体的な施行日の記載がなく、2026年10月27日に確かめたe-Gov法令検索の民法第968条も「印を押さなければならない」のままです。いま作るなら、現行の方式(全文・日付・氏名の自書と押印)で作るのが確実です。
遺言の内容や方式の選び方は、家族構成や財産によって変わります。最終的な判断は、弁護士・司法書士・税理士などに相談してください。公正証書遺言の作り方は、公証役場でも相談できます。
親にどう切り出す?「終活」と言わない伝え方
この章のポイント
- 死ではなく、入院や介護など身近な「もしも」の話にする
- 自分の分から始め、きょうだいと先に話しておく
「生前整理」や「終活」という言葉から死を連想して、身構える親もいます。言葉を変えるだけで、話が進みやすくなることがあります。
「そろそろ終活したら?」
言い換えの例:「家の中を少し身軽にしない?」
ねらい:「今の暮らしを楽にする話」にする
「死んだら困るから、通帳の場所を教えて」
言い換えの例:「入院したときに、すぐ手続きできるようにしておきたい」
ねらい:死ではなく、入院や介護など身近な「もしも」に置きかえる
「遺言を書いておいて」
言い換えの例:「お父さんの希望を、ちゃんと聞いておきたい」
ねらい:財産の分け方ではなく、本人の希望を聞く姿勢を示す
「物が多すぎる」「捨てなよ」
言い換えの例:「この棚だけ、一緒に整理してみない?」
ねらい:否定せず、範囲を小さく区切る
「スマホのパスワードを教えて」
言い換えの例:「スマホが壊れたときの備えに、設定を一緒に見ておこうか」
ねらい:防犯や故障の話から入る
切り出すときのコツは、次のとおりです。
- 自分の分から始める:「自分の口座を書き出したら、意外とわからなかった」と子の側の話として出すと、親も構えにくくなります。
- きょうだいと先に話しておく:一人だけが進めると、「財産の話を急いでいる」と受け取られることがあります。担当を先に共有します。
- ノートを渡すだけにする:法務省のエンディングノートの副題は「あなたに届け、わたしの想い」です。「書けるところだけでいい」と渡し、急がせない方法もあります。
困ったときは、どこに相談する?
| 相談したいこと | 相談先 |
|---|---|
| 自筆証書遺言の保管 | 法務局(遺言書保管所)。内容の相談は不可 |
| 公正証書遺言の作成 | 公証役場 |
| 遺言の内容、相続登記、名義の確認 | 司法書士(各地の司法書士会)、弁護士 |
| 相続税、高額な品の売却にかかる税金 | 税理士、税務署 |
| 判断能力が衰えてきたときの財産管理 | 地域包括支援センター、司法書士、弁護士 |
| 業者や訪問買取とのトラブル | 消費者ホットライン「188」 |
遺言や相続、税金の扱いは、家族構成や財産の内容によって変わります。この記事は一般的な説明です。最終的な判断は、弁護士・司法書士・税理士などに相談してください。
生前整理を進めた先に、実家をどうするかを考える段階が来ます。全体の順番は実家じまいは何から始める?で確認できます。
よくある質問
Q1. 生前整理は、何歳から始めるのがよいですか?
法律や制度で決まった年齢はありません。体力と判断力が十分にあるうちのほうが、本人が自分で選べる範囲が広がります。
親の定年や引っ越し、入院などをきっかけに始める家庭もあります。
Q2. 生前整理と遺品整理は、何がちがいますか?
生前整理は、本人が存命のうちに、本人の意思で進める整理です。遺品整理は、亡くなったあとに遺族が故人の持ち物を整理します。
生前整理では本人に確かめながら残す物を決められるため、「捨ててよかったのか」と家族が迷う場面を減らせます。
Q3. 親が公正証書遺言を作ったかどうか、家族はどう調べればよいですか?
平成元年以降に作成された公正証書遺言は、親が亡くなったあと、相続人などの利害関係人が、全国どこの公証役場でも作成の有無を検索してもらえます。申出は無料です。親が存命のあいだは、検索を申し出られるのは遺言者本人に限られます(日本公証人連合会)。
法務局に預けた自筆証書遺言は、遺言者が亡くなったあと、相続人などが遺言書保管事実証明書(1通800円)を請求すると、自分に関係する遺言書が保管されているかどうかを確かめられます(法務省)。
Q4. 親がすでに物忘れが多くなってきました。生前整理は進められますか?
物の片付けや、口座・保険の一覧づくりは、家族が手伝いながら進められます。ただし、遺言を作ったり不動産を売ったりするには、本人に十分な判断能力が必要です。
判断能力が低下した場合の財産管理には、成年後見制度があります。2026年6月に公布された民法等の改正で、後見と保佐を補助に一元化する見直しが決まっており、施行は公布から2年6か月を超えない範囲で政令で定める日です。法務省のページ(2026年6月30日更新)には、具体的な施行日は示されていません。
まずは地域包括支援センターで相談できます。最終的な判断は、弁護士・司法書士・税理士などに相談してください。
Q5. 親の家の片付けを手伝うとき、交通費などはどう分ければよいですか?
決まった分け方はありません。帰省の回数や距離は、きょうだいで差が出ることがあります。
交通費や業者に払う費用を誰がどう負担するかを、始める前に話しておくと、あとでもめにくくなります。
出典
- 法務省「自筆証書遺言書保管制度」(確認日:2026-10-25)
- 法務省「01 遺言書保管制度とは?」(確認日:2026-10-25)
- 法務省「02 遺言者の手続」(確認日:2026-10-25)
- 法務省「03 遺言書の様式等についての注意事項」(確認日:2026-10-25)
- 法務省「04 相続人等の手続」(確認日:2026-10-25)
- 法務省「05 証明書」(確認日:2026-10-25)
- 法務省「09 手数料」(確認日:2026-10-25)
- 法務省「10 通知」(確認日:2026-10-25)
- 法務省「法務局における遺言書の保管等に関する省令の一部を改正する省令の概要」(令和8年3月2日施行、PDF)(確認日:2026-10-25)
- 法務省「『民法等の一部を改正する法律』(成年後見及び遺言の制度の見直し)について」(令和8年6月30日更新)(確認日:2026-10-27)
- 法務省 民事局「民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)」概要資料(令和8年6月、PDF)(確認日:2026-10-25)
- 法務省・日本司法書士会連合会「エンディングノート 〜あなたに届け、わたしの想い〜」(2023年8月改訂、PDF)(確認日:2026-10-25)
- 法務省「所有不動産記録証明制度について」(確認日:2026-10-25)
- 法務省「相続登記の申請義務化について」(令和8年4月1日更新)(確認日:2026-10-27)
- e-Gov法令検索「民法」(第967条〜第970条、第1004条)(確認日:2026-10-27)
- e-Gov法令検索「法務局における遺言書の保管等に関する法律」(第11条)(確認日:2026-10-25)
- e-Gov法令検索「不動産登記法」(第76条の2、第164条)(確認日:2026-10-25)
- e-Gov法令検索「特定商取引に関する法律」(第58条の6、第58条の14、第58条の15)(確認日:2026-10-25)
- e-Gov法令検索「公証人手数料令」(第9条・別表、第19条、第28条)(確認日:2026-10-27)
- 裁判所「遺言書の検認」(確認日:2026-10-25)
- 日本公証人連合会「遺言」(確認日:2026-10-27)
- 日本公証人連合会「手数料」(確認日:2026-10-27)
- 国民生活センター「今から考えておきたい『デジタル終活』」(2024年11月20日公表)(確認日:2026-10-25)
- 国民生活センター 同 報告書本文(PDF)(確認日:2026-10-25)
- 預金保険機構「口座登録法・口座管理法に基づく業務」(確認日:2026-10-25)
- 預金保険機構「相続時預貯金口座照会利用規定」(PDF)(確認日:2026-10-27)
- 預金保険機構「相続時の預貯金口座照会 お申込みにあたって」(参考、PDF)(確認日:2026-10-25)
- デジタル庁「よくある質問:預貯金口座への付番について」(2026年3月31日更新)(確認日:2026-10-25)
- 生命保険協会「生命保険契約照会制度」(確認日:2026-10-25)
- 国税庁「No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法」(令和8年4月1日現在法令等)(確認日:2026-10-25)
- 消費者庁「消費者ホットライン」(確認日:2026-10-25)
