共有持分だけを売る方法|3つの売り方と民法改正後の選択肢

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共有持分だけを売る方法(3つの売り方と民法改正後の選択肢)

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※2026年10月時点の情報です。

きょうだいで相続した実家などの共有名義の不動産は、自分の持分だけを売ることもできます。この記事では、持分だけを売る3つの方法の違いと、2023年4月施行の民法改正でできた制度、買取価格の考え方を、民法の条文(e-Gov法令検索の現行版)と法務省の資料をもとに整理します。

結論:共有持分だけを売るには、どうすればいい?

この記事で確かめたことは、次のとおりです。

  • 持分だけなら単独で売れる:持分は所有権の性質を持つため、共有者が単独で処分できると説明されています。ほかの共有者の同意は要りません
  • 全体を売るには:原則として、共有者全員がそろって持分を売る形になります
  • 売り方は3つ:ほかの共有者に売る、共有持分を扱う買取業者に売る、共有物分割請求(協議、まとまらなければ裁判)を経る
  • 買取価格:公的な目安はなく、業者により大きく異なります。持分相当額(不動産全体の価格×持分割合)を基準に、複数社の査定で比べます
  • 2023年4月施行の改正:所在が分からない共有者がいても、裁判所の手続きで持分の取得や全体の売却ができる制度ができました。相続財産の持分は、相続開始から10年を経過するまで使えません
この記事の目次
  1. 共有持分とは?民法ではどう決まっている?
  2. 自分の持分だけを売れるのはなぜ?全体を売るときとの違いは?
  3. 共有持分は、どの方法で売ればいい?
  4. 2023年4月の民法改正で、何が変わった?
  5. 買取業者に売ると、なぜ安くなる?
  6. 共有持分の売却では、どんなトラブルが起きている?
  7. 相続で共有になった実家は、どう考えればいい?
  8. 迷ったときは、誰に相談すればいい?
  9. よくある質問
  10. 出典

共有持分とは?民法ではどう決まっている?

この章のポイント

  • 1つの不動産を、割合(持分)で分けて持つ状態
  • 持分は場所ではなく、全体に割合で及ぶ
  • 相続した不動産は、遺産分割まで相続人の共有

1つの不動産を、割合で分けて持っている状態です

共有とは、1つの物を複数の人が所有している状態です。それぞれが持っている割合を「持分」といいます。たとえば、きょうだい2人で2分の1ずつ相続した実家は、2人の共有です。共有者と持分の割合は、登記事項証明書(登記簿)で確かめられます。

持分は、建物の「この部屋」のように場所で分かれているわけではありません。民法第249条第1項は「各共有者は、共有物の全部について、その持分に応じた使用をすることができる。」と定めています。家全体に、割合に応じた権利が及んでいるイメージです。

共有のルールを定めた主な条文

e-Gov法令検索の現行版(2026年6月24日施行の改正を反映)で確かめた、売却に関わる主な条文です(内容は要旨)。

条文内容(要旨)
第249条各共有者は、共有物の全部について持分に応じた使用ができる。共有物を使う共有者は、別段の合意がなければ、ほかの共有者に、自分の持分を超える使用の対価を償還する(第2項)
第251条共有物に変更を加えるには、ほかの共有者の同意が必要。形状や効用の著しい変更を伴わないもの(軽微な変更)は除く
第252条管理に関する事項は、持分の価格に従い過半数で決める。保存行為は各共有者が単独でできる(第5項)
第253条管理の費用などの負担は持分に応じて負う。1年以内に負担しない共有者の持分は、相当の償金を払って取得できる(第2項)
第256条各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できる。5年を超えない期間内は分割しない契約もできる
第258条協議が調わないとき、または協議ができないときは、裁判所に分割を請求できる
第262条の2・第262条の3所在等不明共有者の持分の取得・譲渡(2023年4月施行。後で説明します)

相続した不動産は、まず「遺産共有」になります

民法第898条第1項は「相続人が数人あるときは、相続財産は、その共有に属する。」と定めています。遺産分割が終わるまでの実家は相続人全員の共有で、持分は第900条から第902条までの規定で算定した相続分(法定相続分、遺言で指定があれば指定相続分)によります(同条第2項)。遺産分割で「きょうだいで2分の1ずつ」と決めて登記した場合も、共有は続きます。

相続人が数人いると、相続財産は相続人の共有になる(民法第898条第1項)。遺産分割までは相続人全員の共有で、持分は法定相続分(遺言で指定があれば指定相続分)による。遺産分割できょうだいで2分の1ずつと決めて登記した場合も、共有は続く。

共有の割合や相続分の考え方は、遺言や遺産分割の内容で変わります。最終的な判断は、司法書士・弁護士などに相談してください。

自分の持分だけを売れるのはなぜ?全体を売るときとの違いは?

この章のポイント

  • 自分の持分の売却・贈与は、単独でできる
  • 全体を売るには、原則として全員がそろって売る
  • 賃貸は期間により過半数で決められる

持分は、共有者が単独で処分できると説明されています

民法には、自分の持分を自由に売れると定めた条文はありません。弁護士法人みずほ中央法律事務所の解説では、共有持分は所有権の性質を持つため、共有者が単独で処分できると説明しています。

民法の共有の節(第249条〜第264条)には、持分を売る前にほかの共有者へ知らせることや、ほかの共有者が優先して買い取れることを定めた規定もありません。自分の持分を売ったり贈与したりすることは、ほかの共有者の同意なしにできます。

相続した実家の家と庭のイラスト

全体を売るには、原則として全員がそろって売る形になります

不動産全体を売ることは、ほかの共有者の持分まで処分することになります。2019年4月23日の法制審議会 民法・不動産登記法部会の資料(部会資料3。改正前の資料)では、改正前の第251条(共有物の変更)について、「裁判実務・学説では,共有物全体について売却その他の法律上の処分をする場合についても,同様に共有者全員の同意を要するものと解されている。」と説明しています。

そのため、共有の家を丸ごと売るには、原則として共有者全員がそろって持分を売る形になります。例外は、共有者の一部の所在が分からない場合の制度(第262条の3)で、後の章で説明します。

整理すると、次のようになります。

やりたいこと必要な同意(民法の原則)
自分の持分を売る・贈与する不要
不動産全体を売る原則として共有者全員
建て替えなど、形状や効用の著しい変更共有者全員(第251条第1項)
軽微な変更、管理に関すること持分の価格の過半数(第252条第1項)
賃貸に出す建物は3年、土地は5年(樹木の栽植・伐採が目的の山林は10年)を超えない賃貸なら、持分の価格の過半数で決められる(第252条第4項)
雨漏りの修繕など、保存行為単独でできる(第252条第5項)

法務省の資料では、軽微な変更にあたる例として、砂利道のアスファルト舗装や、建物の外壁・屋上防水等の大規模修繕工事を挙げています。どの行為にあたるかの最終的な判断は、司法書士・弁護士などに相談してください。

共有持分は、どの方法で売ればいい?

この章のポイント

  • 売る前に、登記・利用状況・税の負担を整理
  • 方法は、共有者・買取業者・共有物分割請求の3つ
  • 親族に安く売ると、贈与税の対象になりうる

売り方を選ぶ前に確かめておくこと

  • 登記事項証明書で、共有者全員の氏名と持分の割合を確かめた
  • 相続した不動産なら、相続登記が済んでいる(名義が親のままでは、買主へ名義を移せません)
  • 誰かが住んでいる、または使っているかを把握した
  • 固定資産税を誰がどの割合で払ってきたかを整理した
  • 抵当権(ローンの担保)が残っていないかを確かめた
  • 分割しない約束(不分割の契約。第256条第1項ただし書)を結んでいないかを確かめた

相続登記は2024年4月1日から義務になっています。期限や手続きは、相続した実家を売る流れと税金で整理しています。

3つの売り方の違い

方法1:ほかの共有者に売る

買う共有者と合意できれば売れる

  • 価格:当事者の話し合いで決める
  • 注意:親族に著しく低い価額で売ると、差額が贈与とみなされることがある(相続税法第7条)

共有者が減る、または単独所有になるため、その後の使い方や売却を決めやすくなります

方法2:共有持分を扱う買取業者に売る

自分だけの判断で売れる

  • 価格:市場価格より低くなりやすい(理由は後の章)
  • 注意:売った後、業者とほかの共有者との間で交渉や請求が始まることがある(アットホームの解説)

業者に売る前に、免許番号と処分歴を確かめます

方法3:共有物分割請求を経る

協議、まとまらなければ裁判所に請求

  • 結果:現物分割、賠償分割(代償金)、競売のいずれか
  • 注意:協議で全体の売却に合意できなければ、裁判の手続きになり、時間と費用がかかる

裁判の見通しは事案によって変わるため、弁護士に相談します

方法1:ほかの共有者に売る

最初に検討したいのは、ほかの共有者に買い取ってもらう方法です。進め方の目安は次のとおりです。

  1. 基準を決める不動産全体の査定を取り、「全体の価格×持分割合」を話し合いの出発点にします。
  2. 契約する価格と支払い方法を決め、売買契約書を作ります。
  3. 登記する持分の移転登記を申請します。手続きは司法書士に頼めます。

ここに注意

親族間で売るときは、価格に注意します。相続税法第7条は「著しく低い価額の対価で財産の譲渡を受けた場合」に、対価と時価との差額に相当する金額を、贈与により取得したものとみなすと定めています。

「身内だから安くていい」と決めると、買った側に贈与税がかかるおそれがあります。価格の決め方の最終的な判断は、税理士などに相談してください。

方法2:共有持分を扱う買取業者に売る

ほかの共有者が買い取りに応じない、話し合い自体ができないといった場合は、共有持分を扱う不動産会社に売る方法があります。自分1人の判断で売れるのが特徴です。

一方で、価格は低くなりやすく、売った後にほかの共有者と業者との間で交渉や請求が始まることがあります。価格とトラブルは、後の章で説明します。

アットホームの解説では、複数の業者に査定を依頼し、価格を比べることが重要だとしています。買取業者の免許番号と行政処分の履歴の調べ方は、空き家買取の仕組みと業者の選び方で整理しています。

方法3:共有物分割請求を経てから売る

民法第256条第1項により、各共有者は、いつでも共有物の分割を請求できます。まず共有者どうしで協議し、協議が調わないとき、または協議ができないときは、裁判所に請求します(第258条第1項)。

現物分割

物そのものを分ける

土地を分筆するなど。自分の単独所有になった部分は、自分の判断で売れます(第258条第2項第1号)

賠償分割(代償金)

1人が持分を取得し、代わりに金銭を払う

共有者に債務を負担させて、ほかの共有者の持分の全部または一部を取得させる方法(第258条第2項第2号)。持分を手放す側は、代償金を受け取ります

競売による分割

裁判所が競売を命じ、代金を分ける

現物分割・賠償分割ができないとき、または分割で価格を著しく減少させるおそれがあるときに命じられます(第258条第3項)

法務省の資料では、2023年4月の改正で、裁判による分割の方法として賠償分割が明文化され、競売による分割はその後に検討するという順序が明確になったと説明しています。アットホームの解説では、競売は市場価格より低くなりやすいとしています。協議の段階で全体の売却に合意できるかどうかが、分かれ目になります。

共有物分割の進み方。まず共有者どうしで協議し、協議が調わない、またはできないときは裁判所に請求する(民法第258条第1項)。裁判では現物分割か賠償分割(代償金)、それができないときや価格を著しく減少させるおそれがあるときは競売(第258条第3項)。

状況別の考え方

こんな状況なら検討しやすい方法
ほかの共有者に、買う意思と資金がある方法1(共有者に売る)
話し合いができない、または早く手放したい方法2(買取業者に売る)
時間がかかっても、協議や裁判で分け方を決めたい方法3(共有物分割請求)
共有者の中に、連絡先や所在が分からない人がいる次の章の「所在等不明共有者」の制度

どの方法が合うかは、共有者の人数や関係、住んでいる人の有無で変わります。最終的な判断は、弁護士・司法書士などに相談してください。

2023年4月の民法改正で、何が変わった?

この章のポイント

  • 所在が分からない共有者の持分を、裁判で取得・譲渡できる
  • 相続財産の持分は、相続開始から10年を経過するまで不可
  • 10年経過後は、遺産共有も共有物分割でまとめて解消できる

共有のルールを見直した改正民法が、2023年(令和5年)4月1日に施行されました。法務省の資料「民法の改正(所有者不明土地等関係)の主な改正項目について」と条文をもとに、持分の売却に関わる点を整理します。

所在が分からない共有者がいても、持分の取得や全体の売却ができるようになりました

共有者の中に所在が分からない人がいると、全員がそろわず、不動産全体を売れないという問題がありました。改正で、次の2つの制度ができています。

所在等不明共有者の持分の取得(第262条の2)

ほかの共有者が、所在等不明共有者の持分を取得する

  • 申立て先:不動産の所在地の地方裁判所(法務省の資料)
  • 手続き:裁判所が決めた額(時価相当額)の金銭を供託し、3か月以上の異議届出期間などを経て、裁判で取得する(法務省の資料)

請求した共有者が2人以上なら、持分の割合で按分して取得します(第262条の2第1項)

所在等不明共有者の持分の譲渡(第262条の3)

不動産全体を第三者に売るために、所在等不明共有者の持分を譲渡する権限を裁判で得る

  • 条件:所在等不明共有者以外の共有者の全員が、同じ相手(特定の者)に持分の全部を譲渡すること(第262条の3第1項)
  • 手続き:時価相当額のうち持分に応じた額を供託し、3か月以上の異議届出期間を経て裁判。裁判の効力が生じてから原則2か月以内(裁判所は延ばせる)に売る(法務省の資料)

ほかの共有者のうち1人でも持分を売らなければ、この方法では全体を売れません

どちらの制度も、登記簿の調査に加えて、住民票の調査など必要な調査をしたうえで、所在等が分からないと認められる必要があります(法務省の資料)。

所在等が分からなかった共有者は、取得した共有者に持分の時価相当額を(第262条の2第4項)、譲渡の場合は譲渡した共有者に、不動産の時価相当額を持分に応じて按分した額を(第262条の3第3項)請求できます。

相続した不動産は「相続開始から10年」が区切りです

ここに注意

所在等が分からない共有者の持分が、遺産分割をすべき相続財産に属する場合、取得・譲渡の制度は、相続開始の時から10年を経過していないと使えません(第262条の2第3項、第262条の3第2項)。

法務省の資料では、10年を経過する前でも、所在等が分からない相続人の土地・建物の持分について、所有者不明土地・建物管理人を選んでもらうことはできるとしています。

また、相続開始の時から10年を経過すると、相続財産に属する共有物の持分も、共有物分割の裁判で分割できるようになりました(第258条の2第2項)。ただし、その持分について遺産分割の請求があり、相続人が共有物分割をすることに異議を申し出た場合は、この方法は使えません(同項ただし書)。異議の申出は、裁判所から請求があった旨の通知を受けた日から2か月以内にする必要があります(同条第3項)。

相続財産の持分は、相続開始から10年が区切り。所在等不明共有者の持分が遺産分割をすべき相続財産に属する場合、10年を経過するまでは持分の取得・譲渡の制度は使えない。10年を経過すると、遺産共有の持分も共有物分割の裁判で分割できる(遺産分割の請求があり相続人が異議を申し出た場合を除く)。

法務省の資料では、改正前は、通常の共有持分と遺産共有の持分の解消を別々の手続きで行わなければならなかったと説明しています。

持ち続ける場合の決め方も変わりました

軽微な変更は、持分の価格の過半数で決められるようになりました(第251条第1項のかっこ書き、第252条第1項)。また、裁判所の決定を得て、次のように決められる制度ができています。

  • 所在等が分からない共有者がいる場合:変更(第251条第2項)と管理(第252条第2項第1号)
  • 賛否を明らかにしない共有者がいる場合:管理だけ(第252条第2項第2号)。法務省の資料では、変更行為には利用できないとしています

どの制度を使うかは事案ごとの判断になります。最終的な判断は、弁護士・司法書士などに相談してください。

買取業者に売ると、なぜ安くなる?

この章のポイント

  • 公的な目安はなく、業者により大きく異なる
  • 持分相当額を基準に、複数社の査定で比べる
  • 使い方の制限や買い手の少なさが理由とされる

買取価格に公的な目安はなく、業者により大きく異なります

今回調べた範囲では、共有持分の買取価格について、国などの公的な統計や目安は見つかりませんでした。提示額は、業者や物件、ほかの共有者との関係によって大きく異なります。

価格を比べるときは、持分相当額を基準に、複数の会社の査定で比べます。

持分相当額の計算のしかた

持分相当額は、不動産全体の価格(査定額)に、自分の持分割合を掛けた額です。たとえば持分が2分の1なら、全体の査定額の半分です。

業者の提示額が持分相当額のどのくらいにあたるかを、会社ごとに比べると、差が分かりやすくなります。

アットホームの解説(2026年5月18日更新)では、提示される価格が市場価値よりも大幅に低くなるケースも珍しくないとし、「相場の半分以下で売却してしまった事例も多く見られます。」としています。

安くなる理由として挙げられていること

辻・本郷グループが運営する「辻本郷NAVI」(弁護士監修、2025年8月19日更新)とアットホームの解説では、次の点が挙げられています。

理由内容
使い方に制限がある建て替えや全体の売却は共有者全員の同意、リフォームなどは持分の価格の過半数が要り、1人では決められない(民法第251条・第252条)。アットホームは、売却に共有者全員の同意が要る点を挙げている
買い手が少ない共有持分だけを欲しがる買い手は市場に少ない(辻本郷NAVI)。一般の買主にとって魅力が低く、流通性も高くない(アットホーム)
業者が負うリスクと利益業者はリスクを見込んで価格を低めに設定する傾向があり、全体を取得して利益を得るためにできるだけ安く仕入れようとする(アットホーム)
相場が分かりにくい取引事例が少なく相場を把握しにくいため、不利な条件での契約につながりやすい(アットホーム)

業者の提示額は、方法1(共有者に売る)や、全員で全体を売った場合の額と比べてから判断すると、差が分かりやすくなります。同じ辻本郷NAVIの解説では、共有者全員の合意で全体を売る場合は、市場価格での取引が期待できるとしています。

全体を売るには原則として共有者全員がそろう必要があり、その場合は市場価格での取引が期待できる(辻本郷NAVIの解説)。持分だけを買取業者に売る場合は自分1人の判断で売れるが、市場価値より大幅に低くなるケースも珍しくない(アットホームの解説)。持分相当額(全体の価格×持分割合)を基準に比べる。

価格の妥当性は、複数の不動産会社の査定で比べます。契約の内容や売却後の権利関係についての最終的な判断は、弁護士などに相談してください。

共有持分の売却では、どんなトラブルが起きている?

この章のポイント

  • 業者の分割請求が「権利の濫用」とされた裁判例がある
  • 住んでいる共有者への賃料請求などが挙げられている
  • 急かされたら持ち帰り、188などに相談する

ここでは、出典のある事例と、解説記事で挙げられているトラブルの型に絞って紹介します。

裁判例:業者による分割請求が「権利の濫用」とされた例

弁護士法人みずほ中央法律事務所は、共有物分割請求を権利の濫用とした裁判例をまとめたページで、共有持分を買った業者が原告になった例として、東京地裁平成27年5月27日判決を紹介しています。同ページの紹介によると、事案は次のとおりです。

  • 夫が妻に、夫婦の共有マンションの分割を求めた前の裁判で、夫の請求は権利の濫用として退けられていました。
  • その控訴審の途中(平成26年10月17日付の契約)で、業者が夫から持分2分の1を2,050万円で買いました。
  • 業者は分割を求めましたが、裁判所は、業者が前の裁判を知っていたかは明らかでないとしつつ、知らなかったのであれば十分な調査をせずに持分を買ったことになるとして、業者の請求も権利の濫用として退けました。
東京地裁平成27年5月27日判決の紹介。夫の分割請求が権利の濫用として退けられた裁判の控訴審の途中で、業者が夫から持分2分の1を2,050万円で買った(平成26年10月17日付の契約)。業者の分割請求も権利の濫用として退けられた。

同じページでは、ほかの共有者が重い病気や高齢である、その家で暮らすことが前提とされていたといった事情から、分割請求が権利の濫用とされた例も紹介されています。分割請求は「いつでも」できる(第256条第1項)のが原則ですが、事情によっては認められない場合もあります。

解説記事で挙げられているトラブルの型

アットホームの解説(2026年5月18日更新)では、共有持分の買取業者に関わるトラブルとして、次の型を挙げています。

ほかの共有者への強引な交渉

心理的な圧力をかけて売却を働きかける

関係の悪化や親族間のトラブルにつながるとしています

住んでいる共有者への賃料請求

過去にさかのぼって請求されるケースもある

関係する民法の規定:第249条第2項(自分の持分を超える使用の対価の償還)

ほかの共有者も安く売ってしまう

業者が残りの持分も取得しようとする

ほかの共有者も不利な価格で売ってしまうおそれがあるとしています

共有物分割請求による訴訟

不動産が競売にかけられる可能性

ほかの共有者が応じないと、業者が裁判所に分割を申し立てることがあるとしています(関係する規定:第256条・第258条)

共有者との関係の悪化・売主への責任追及

「勝手に売却された」と受け取られる

業者との紛争が起きたとき、売った人の売却が原因とみなされることがあるとしています

持分を業者に売ると、ほかの共有者は、知らない会社と共有することになります。法律上は単独で売れても、きょうだいの暮らしや関係に影響が及ぶことは知っておきたい点です。

トラブルを避けるために、売る側ができること

  • 売る前に、ほかの共有者へ買い取りの意思を確かめる
  • 業者に、売却後にほかの共有者とどう交渉を進めるかを説明してもらう
  • 誰かが住んでいる家なら、その人の今後の住まいの見通しも含めて考える
  • 「今日中に決めてほしい」と急かされたら、いったん持ち帰り、家族や専門家に相談する
  • 業者の勧誘や契約で困ったら、消費者ホットライン「188」で、最寄りの消費生活センターなどの相談窓口を案内してもらえる

業者との交渉や裁判の見通しについての最終的な判断は、弁護士に相談してください。

相続で共有になった実家は、どう考えればいい?

この章のポイント

  • 遺産分割の前なら、共有を避ける分け方も検討できる
  • すでに共有なら、住む人と負担の現状から整理
  • 相続人3人以上だと空き家特例の控除は2,000万円まで

まだ遺産分割の前なら、共有を避ける分け方があります

相続した実家をきょうだいで共有にすると、全体を売るには全員がそろう必要があり、共有者が亡くなるとその持分がさらに相続されていきます。遺産分割の話し合いがまだなら、共有を避ける分け方を先に検討できます。

テーブルを囲んで家族が話し合うイラスト
分け方内容
1人が相続し、代償金を払う1人が実家を相続し、ほかのきょうだいに代償金を払う
売って代金を分ける(換価分割)相続人全員で実家を売り、代金を分ける
共有で相続する当面の判断を先送りできるが、全体を売るには全員がそろう必要がある

遺産分割の前に、相続人の1人が実家の持分だけを第三者に売ると、その後の解消の手続き(遺産分割か、共有物分割か)にも関わり、扱いが複雑になります。この段階で持分の売却を考えるときは、先に弁護士に相談してください。

実家を手放すかどうかの判断や、片付けから売却までの順番は、実家じまいは何から始める?で整理しています。

すでに共有になっている実家は、「誰が住み、誰が払っているか」から整理します

すでに共有で登記している場合は、次の順で考えると、話し合いの材料がそろいます。

  1. 現状を共有する持分の割合、住んでいる人の有無、固定資産税や修繕費を誰が払ってきたかを確かめます(管理の費用などは持分に応じて負担。第253条第1項)。
  2. 全体を売るかどうかを先に話す全員が売ることに合意できれば、市場で全体を売る道が開けます。
  3. 売りたい人と残したい人に分かれたら残したい人が持分を買い取る(方法1)か、分割の協議をします(方法3)。
  4. 連絡がつかない、話し合いが進まない所在が分からない人がいるなら所在等不明共有者の制度、話し合いが進まないなら業者への売却や分割請求を、専門家と検討します。

相続した実家を売ったときの税金は、相続した実家を売る流れと税金で整理しています。共有で相続した場合に関わる点として、国税庁 No.3306 では、空き家の3,000万円特別控除について、令和6年1月1日以後の譲渡で、家と敷地を相続などで取得した相続人が3人以上の場合は、控除額が2,000万円までになるとしています。

土地だけが残り、売る見込みも使う予定もない場合は、相続土地国庫帰属制度もあります。共有の土地は、共有者全員で申請します(相続土地国庫帰属制度の使い方)。

遺産分割や税金の扱いは、相続の経緯で変わります。最終的な判断は、弁護士・司法書士・税理士などに相談してください。

迷ったときは、誰に相談すればいい?

相談したいこと相談先
持分の移転登記、相続登記司法書士、法務局
共有物分割請求、所在等不明共有者の制度、ほかの共有者との交渉弁護士(法テラスには、収入や資産が一定の基準以下の人を対象にした無料の法律相談があります)
親族間で売るときの価格、譲渡所得の申告税理士、税務署
不動産全体の査定、持分の買取価格の比較不動産会社(複数社を比べる)
業者の勧誘や契約に関する困りごと消費生活センターなど(消費者ホットライン「188」で最寄りの窓口を案内)

この記事は、共有持分の売却についての一般的な説明です。持分の売り方や手続きは、共有者の状況や相続の経緯で大きく変わります。最終的な判断は、弁護士・司法書士・税理士などに相談してください。

よくある質問

Q. 持分を売ったことは、ほかの共有者に知らされますか?

民法の共有の節には、持分を売る前にほかの共有者へ知らせる義務を定めた規定はありません。ただし、持分の移転の登記がされれば、登記事項証明書で分かります。

アットホームの解説では、持分を買った業者が、ほかの共有者に売却を働きかけることがあるとしています。関係の悪化を避けたい場合は、売る前に自分から伝えておく方法もあります。

Q. 持分が少しだけ(たとえば10分の1)でも売れますか?

民法の共有の節には、持分の割合によって売却を制限する規定はありません。価格は持分の大きさや物件によって変わるため、複数の会社の査定で確かめてください。

Q. 住宅ローンが残っている共有名義の家でも、持分だけを売れますか?

担保(抵当権)が付いている場合の扱いは、ローンの契約内容によって変わります。売る前に、借入先の金融機関に、どんな手続きが必要かを確かめてください。最終的な判断は、司法書士・弁護士などに相談してください。

Q. 夫婦の共有名義の家を、離婚に伴って処分する場合も同じ考え方ですか?

持分だけなら単独で売れる、全体を売るには原則として全員がそろう、という民法の考え方は同じです。ただし、離婚では財産分与の取り決めとも関わります。最終的な判断は、弁護士に相談してください。

Q. 持分を売った後、固定資産税はどうなりますか?

固定資産税の賦課期日は、その年度の初日の属する年の1月1日です(地方税法第359条)。その時点で登記簿などに所有者として登記・登録されている人に課税されます(同法第343条)。共有の不動産の固定資産税は、共有者が連帯して納める義務を負います(同法第10条の2第1項)。

年の途中で売った場合の負担の分け方は、売買契約で取り決めます。税金の扱いの最終的な判断は、市区町村の税務担当課や税理士に確かめてください。

出典

執筆・編集:しまい支度編集部(編集方針)

最終確認日:2026年10月27日