借地権の売却|地主の承諾と承諾料の目安、4つの売り方を整理

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借地権の売却:地主の承諾と承諾料の目安、4つの売り方

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※2026年10月時点の情報です。

親が借地に建てた家を相続した、地代だけを払い続けている、という場合も、借地権は売ることができます。ただし土地は地主のものなので、所有権の家とは手順が変わります。この記事では、地主の承諾、承諾料(名義書換料)の目安の出どころ、地主が承諾しないときの裁判所の手続、売り方の選び方、相続した借地権の扱いを、法令・裁判所・国税庁の情報をもとに整理します。

結論:借地権を売る前に、何を押さえればいい?

判断の材料は次の5つです。

  1. 地主の承諾:土地の賃借権を第三者に譲るには、地主(賃貸人)の承諾が要ります(民法第612条)。借地上の家を売ると賃借権も買主に移るため、建物の売買でも承諾が必要です
  2. 承諾料の目安:東京都不動産鑑定士協会のQ&Aでは、東京地方裁判所は借地権価格の10%相当額を基準に、個別の事情で増減して決めていると説明しています。法律で決まった額ではありません
  3. 承諾が得られないとき:地主に不利となるおそれがないのに承諾しない場合、裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てられます(借地借家法第19条)。東京地方裁判所は、多くの事件は特段の事情がなければ概ね1年以内に終わっているとしています
  4. 介入権:申立て後、地主が自分で買い取ると申し立てると、原則として地主が裁判所の定めた価格で買い受けることになります(東京地方裁判所の説明)
  5. 相続:相続人は被相続人の権利義務を承継します(民法第896条)。民法第612条が承諾を求めているのは「譲り渡し」と「転貸」です。相続後に第三者へ売るときは、地主の承諾が要ります

相続登記・税金・特例の期限を含む売却全体の流れは、相続した実家を売る流れと税金で解説しています。

この記事の目次
  1. あなたの借地権はどの種類?売る前に契約書で確かめること
  2. 第三者に売るのに、なぜ地主の承諾が要る?
  3. 承諾料(名義書換料)の目安は?計算の流れと税金
  4. 地主が承諾しないときは?借地非訟の流れと費用
  5. 借地権の売り方は4つ。どれを選べばいい?
  6. 相続した借地権は、売る前に何をすればいい?
  7. 買主が建て替えるときの承諾は、どう考える?
  8. 売買契約の前に、何を確かめればいい?
  9. 相談先はどこ?
  10. よくある質問
  11. 出典

あなたの借地権はどの種類?売る前に契約書で確かめること

この章のポイント

  • 売り方は「いつ契約したか」と「定期借地権か」で変わる
  • 平成4年8月1日より前の借地は、更新などに旧借地法のルールが続く
  • 契約書がなくても、登記や地代の記録で中身を確かめる

借地権は、借地借家法第2条第1号で「建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう。」と定められている権利です。売却の進め方は、いつ契約したかと定期借地権かどうかで変わります。手元の土地賃貸借契約書で、最初に契約した日付を確かめてください。

契約日で「旧借地法」か「借地借家法」かが分かれる

借地借家法の制定にあわせて、旧借地法(大正10年法律第49号)は廃止されました(借地借家法附則第2条)。ただし、借地借家法の施行前に設定された借地権の更新や、建物の朽廃(古くなって使えなくなること)による消滅については、「なお従前の例による」とされています(同附則第5条・第6条)。

東京地方裁判所の説明では、更新後の建物の再築許可(借地借家法第18条)は「平成4年8月1日以降に設定された借地権」だけが対象です。つまり、平成4年(1992年)8月1日より前に始まった借地は、更新しても、更新や朽廃について旧借地法のルールが続きます。親の代から続く借地なら、まずこちらに当たるかを確かめます。

借地権の種類の確かめ方。定期借地権の契約なら、期間が終われば借地権は終わる。平成4年8月1日より前に設定された借地権なら、更新や朽廃は旧借地法の例により、更新後の再築許可(借地借家法第18条)は使えない。どちらでもなければ普通借地権で、存続期間30年(契約でより長くできる)、最初の更新20年、その後10年。

借地権の種類ごとの違い

旧借地法の借地権(平成4年8月1日より前に設定)

  • 期間と更新:旧借地法の定めによる(更新は「なお従前の例による」:借地借家法附則第6条)。旧借地法は廃止されているため、ここでは廃止時点の条文(名古屋大学の法令データベースによる)で示します。存続期間は、堅固な建物(石造・土造・れんが造など)の所有を目的とするものが60年、その他の建物が30年で、契約で堅固な建物は30年以上、その他の建物は20年以上の期間を定めることもできました(旧借地法第2条)。更新後の期間は、堅固な建物30年、その他の建物20年です(同第5条第1項)。地主が更新を拒むには、自ら土地を使うことが必要な場合その他正当の事由があって、遅滞なく異議を述べる必要があります(同第4条第1項ただし書・第6条第2項。昭和16年の改正で加えられたもの)
  • 売るときの注意:建物の朽廃による消滅も旧借地法の例による(同附則第5条)。更新後の再築許可(第18条)は使えない(同附則第11条)

普通借地権(平成4年8月1日以降に設定)

  • 存続期間:30年。契約でこれより長くできる(借地借家法第3条)
  • 更新:最初の更新は20年、その後は10年(同第4条)。地主が更新を拒むには正当の事由が要る(同第6条)
  • 売るときの注意:残りの期間と、更新後の再築の手続(同第18条)を確かめる

一般定期借地権

  • 存続期間:50年以上(同第22条)
  • 更新:更新しない、建物の築造による延長をしない、建物の買取りを請求しない特約を、公正証書による等書面で定める
  • 売るときの注意:期間が終われば借地権は終わる。残りの期間が短いほど、買い手は考えにくくなる

事業用定期借地権等

  • 存続期間:10年以上50年未満。専ら事業の用に供する建物(居住用を除く)に限る(同第23条)
  • 契約:公正証書でする
  • 売るときの注意:住まいの借地ではない

建物譲渡特約付借地権

  • 内容:設定後30年以上たった日に、建物を地主に相当の対価で譲る特約(同第24条)
  • 売るときの注意:特約の時期と対価の決め方を契約書で確かめる

契約書が見つからないときは

契約書が見つからなくても、次の資料で契約の中身をできるだけ再現します。

  • 建物の登記事項証明書(建物の名義、建てた時期)。借地上に借地権者が登記した建物があれば、借地権を第三者に主張できます(借地借家法第10条第1項)
  • 土地の登記事項証明書(地主の氏名、地上権の登記があるかどうか)
  • 地代の振込記録や領収書(地代の額と支払先)
  • 更新料や承諾料を払ったときの書面
  • 地主側に残っている契約書の写し

契約の種類や残りの期間の読み取りに迷う場合、最終的な判断は弁護士などに相談してください。

第三者に売るのに、なぜ地主の承諾が要る?

この章のポイント

  • 賃借権の無断譲渡は、契約を解除される理由になる
  • 建物を売ると賃借権も移るので、建物の売買でも承諾が要る
  • 地上権として設定されている借地は、扱いを弁護士に確かめる

民法第612条第1項は、「賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。」と定めています。同条第2項は、これに違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は契約の解除をすることができるとしています。

借地上の家を売ると、建物と一緒に、土地を使う権利(賃借権)も買主に移ります。そのため、建物の売買であっても、地主の承諾が要ります。承諾を得ないまま売ると、契約を解除されるおそれがあります。

借地上の家を売ると、土地を使う権利(賃借権)も買主に移る。賃借権の譲渡には地主の承諾が要る(民法第612条第1項)。承諾を得ないまま売ると、契約を解除されるおそれがある(同条第2項)。

補足

民法第612条と、後で説明する借地借家法第19条は、どちらも「賃借権」についての規定です。借地権が地上権として設定されている場合は扱いが異なるため、土地の登記事項証明書で地上権の登記があるかを確かめ、弁護士に相談してください。

承諾がないまま売った場合の扱いや、承諾書の文面について、最終的な判断は弁護士に相談してください。

承諾料(名義書換料)の目安は?計算の流れと税金

この章のポイント

  • 承諾料の目安は、借地権価格の10%相当額を基準とする説明がある
  • 借地権価格は、更地の価格×借地権割合で考える
  • 売主が払う名義書換料は、譲渡所得の計算で譲渡費用になる

承諾料の目安として紹介されている数字

地主が譲渡を承諾するときに、借地人が地主に払うお金を承諾料と呼びます。名義書換料、譲渡承諾料とも呼ばれます。今回確かめた東京地方裁判所の借地非訟の案内ページ(第1〜第3)には、承諾料の額の目安は載っていません。目安を示しているのは、次の2つの団体の解説です。

東京都不動産鑑定士協会のQ&A(掲載日の記載なし)

借地権価格の10%相当額を基準

東京地方裁判所では、借地権価格の10%相当額を基準とし、鑑定委員会の意見をもとに個別の事情を考えて増減して決めている、という説明

全日本不動産協会の法律相談(弁護士 渡辺晋氏、月刊不動産2004年4月号掲載)

借地権価格の1割を基準に増減

計算方法が確立しているわけではなく、地域差もあるとしたうえで、多くの場合、借地権価格(更地価格×借地権割合)の1割を基準に、個別の事情で増減させて決められているようだ、という説明。都市部では比較的高く、郊外では比較的低いとも言えそうだ、としている。記事は掲載当時の法令・情報に基づくと注記されている

全日本不動産協会の同じ解説では、借地権の残りの期間が長いことは増額の方向に、以前に多額の権利金を払っていることは減額の方向に考慮されるとしています。どちらも法律で決まった額ではなく、実際の額は地主との話し合い、または裁判所の手続で決まります。

承諾料の目安を計算する流れ

  1. 更地の価格を出す借地になっていない状態の土地の価格を考えます。
  2. 借地権割合を掛ける更地の価格に借地権割合を掛けて、借地権価格を出します。
  3. 10%程度を基準に考える上の2つの解説の目安を当てはめ、個別の事情で増減する余地があると考えます。

東京都不動産鑑定士協会のQ&Aでは、更地価格1億円、借地権割合70%の設例で、借地権価格7,000万円、名義書換料700万円という計算を示しています。同じQ&Aは、これを簡略化した計算として示しています。

東京都不動産鑑定士協会のQ&Aの設例。更地価格1億円に借地権割合70%を掛けると借地権価格7,000万円、その10%相当額で名義書換料700万円。簡略化した計算で、実際の額は個別の事情で増減する。

借地権割合は、国税庁の路線価図で確かめられる

国税庁の説明では、借地権割合は路線価図の路線価の後ろにアルファベットで表示されています。

路線価図の記号借地権割合
A90%
B80%
C70%
D60%
E50%
F40%
G30%

たとえば「215D」は、1㎡あたりの路線価が215,000円(千円単位で表示)で、借地権割合が60%という意味です。

ここに注意

路線価と借地権割合は、国税庁が相続税・贈与税の財産評価に使うために示しているものです。実際の取引で地主と合意する価格とは一致しないことがあるため、交渉に使う前に、不動産鑑定士や借地権の取引を扱う不動産会社に確かめてください。

承諾料と税金

国税庁 No.3255 は、譲渡所得の計算で差し引ける譲渡費用の一つに「借地権を売るときに地主の承諾をもらうために支払った名義書換料など」を挙げています。売主と買主のどちらが承諾料を払うかは、売買契約で決めます。

国税庁の質疑応答事例では、借地上の建物を借地権ごと第三者に譲るときに地主が受け取る名義書換料は、他の者に土地を利用させることの対価として、消費税の非課税取引とされています(令和7年8月1日現在の法令・通達等にもとづく事例)。

譲渡所得の計算のしかたや取得費の考え方は、相続した実家を売る流れと税金で整理しています。承諾料の額や税金の扱いについて、最終的な判断は不動産鑑定士・税理士などに相談してください。

地主が承諾しないときは?借地非訟の流れと費用

この章のポイント

  • 地主に不利となるおそれがないのに承諾しないとき、裁判所が許可できる
  • 東京地裁では、多くの事件が概ね1年以内に終わっている
  • 買主の候補が決まってから申し立てる手続

裁判所に「承諾に代わる許可」を申し立てられる(借地借家法第19条)

借地借家法第19条第1項は、借地上の建物を第三者に譲渡しようとする場合に、その第三者が賃借権を取得しても地主に不利となるおそれがないにもかかわらず、地主が承諾しないとき、裁判所は借地権者の申立てにより、地主の承諾に代わる許可を与えることができると定めています。このとき裁判所は、借地条件の変更を命じたり、許可を財産上の給付(承諾料に当たるもの)にかからせたりすることができます。

この手続は「借地非訟」と呼ばれます。東京地方裁判所の説明では、借地非訟は旧借地法と借地借家法に定める借地権を扱い、建物の所有を目的とする土地賃貸借契約または地上権設定契約であることが必要とされています。

裁判所が考える事情と、地主の「介入権」

考える事情(第19条第2項)

残りの期間、これまでの経過、譲渡が必要な事情など

賃借権の残存期間、借地に関する従前の経過、賃借権の譲渡を必要とする事情、その他一切の事情を考慮する

介入権(第19条第3項)

地主が自分で買い取ると申し立てられる

裁判所が定める期間内に地主が申し立てたときは、裁判所は許可に代えて、相当の対価などを定めて地主への譲渡を命じることができる

鑑定委員会(第19条第6項)

裁判の前に、原則として意見を聴く

特に必要がないと認める場合を除く。鑑定委員会は3人以上の委員で組織する(第47条第1項)

東京都不動産鑑定士協会のQ&Aでは、許可の判断では譲受人の資力や社会的信用などが見られ、地主がこれらの点を立証しない限り、許可されるのが一般的だと説明しています。

ここに注意

東京地方裁判所の説明では、裁判所が定めた期間内に介入権行使の申立てがあると、原則として、地主が借地権者の建物と土地の賃借権を、裁判所が定めた価格で買い受けることになります。

東京都不動産鑑定士協会のQ&Aでは、介入権の対価は、借地人が第三者に売る予定の価格とは関係なく、建物と借地権の正常価格から名義書換料相当額を差し引き、地主に対抗できる借家人がいる場合はその借家権価格も差し引いて算定すると説明しています。買主と話を進めている場合は、この可能性をあらかじめ伝えておきます。

地主が承諾しないときは、裁判所に承諾に代わる許可を申し立てられる(借地借家法第19条)。裁判所が定めた期間内に地主が介入権を申し立てると、原則として地主が裁判所の定めた価格で買い受ける。申し立てがなければ、裁判所が許可を判断する。

手続の流れと期間の目安(東京地方裁判所の説明)

  1. 申立て借地の所在地を管轄する地方裁判所に申し立てます。当事者が合意すれば、所在地を管轄する簡易裁判所も扱えます(借地借家法第41条)。
  2. 第1回審問期日申立てから概ね1か月から1か月半後に指定されます。審問は非公開です。
  3. 鑑定委員会の現地調査審問期日から約1か月半程度後に行われます。鑑定委員は、事件ごとに弁護士、不動産鑑定士及び有識者(建築士を含む)から3人以上が指定されます。
  4. 意見書鑑定委員会が、許可の可否や承諾料の額などについて意見書を出します。
  5. 審問・決定意見書の提出から1か月から1か月半程度で審問期日が開かれ、主張と立証が終わった段階で決定が出ます。途中で和解を勧められることもあります。
  6. 不服申立て決定に不服があるときは、決定書の送達を受けた日から2週間以内に即時抗告ができます。

東京地方裁判所は、「多くの事件は、特段の事情がなければ、概ね1年以内には終わっています。」としています。

費用と準備するもの

申立手数料(東京地方裁判所の説明)

収入印紙で納める

借地の固定資産評価額をもとに算定する。平成6年4月1日から当分の間、評価額に2分の1を掛けた額を基準とする軽減措置がある。額は裁判所の手数料早見表で確かめる

郵便切手(東京地方裁判所の説明)

相手方1名の場合6,000円分

相手方が1名増えるごとに1,000円分を追加

鑑定委員の費用(東京地方裁判所の説明)

国が負担

当事者は費用が掛からないとしている

代理人

代理人をつけるなら原則として弁護士

借地借家法第44条第1項。簡易裁判所では、その許可を得て弁護士でない者を手続代理人にできる

大阪地方裁判所の案内では、賃借権の譲渡の許可の申立てには、共通の書類(固定資産評価証明書、登記事項証明書、公図の写し、賃貸借契約書、路線価図など)に加えて、借地権の譲受予定者の住民票(法人なら登記事項証明書)と資力を証明する書面が必要とされています。借地非訟は、買主の候補が決まってから申し立てる手続です。

借地非訟事件手続規則では、申立書に借地契約の内容や、申立て前の当事者間の協議の概要を書くことになっています。まずは地主と話し合い、まとまらないときの選択肢として考えます。申立てを検討するときの最終的な判断は、弁護士に相談してください。

借地権の売り方は4つ。どれを選べばいい?

この章のポイント

  • 地主に売るなら、譲渡の承諾の問題は生じない
  • 第三者や買取業者に売るなら、地主の承諾が要る
  • 底地と一緒に売るなら、代金の分け方の合意が要る

借地権の売り方は、買主が誰かで4つに分けられます。

借地上に建つ一戸建ての家と庭のイラスト

1. 地主に売る

地主が買主なので、譲渡の承諾の問題は生じない

  • 向いている例:地主が土地を自分で使いたい、更地にして活用したい
  • 注意点:地主に買う意思と資金があるかで決まる。価格は話し合いで決める

2. 底地と一緒に売る

地主の合意が前提

  • 内容:借地権と底地(地主の土地の所有権)をまとめて第三者に売る
  • 向いている例:地主も底地を手放したいと考えている
  • 注意点:代金を借地人と地主でどう分けるかの合意が要る

3. 第三者に売る

地主の承諾が要る。得られなければ借地非訟

  • 向いている例:借地のままでも住みたい人がいそうな立地
  • 注意点:承諾が得られるまで売買が確定しない。建替えの承諾も買主の関心事になる

4. 買取業者に売る

業者も第三者なので、地主の承諾が要る

  • 向いている例:遠方に住んでいて、買主探しや交渉に時間をかけにくい
  • 注意点:地主との交渉を誰が担うか、承諾料をどちらが負担するかは業者ごとの条件で確かめる

1. 地主に売る

地主にとっては、借地権を買い戻せば土地を自由に使えるようになります。地主が買主になるので、譲渡の承諾や承諾料の問題は生じません。

価格の目安を持たずに話を始めると、提示額が妥当か判断できません。不動産鑑定士に借地権の評価を頼むか、複数の不動産会社に意見を聞いてから話を始めると、きょうだいへの説明もしやすくなります。

2. 底地と一緒に売る

買主は、借地権付きではない土地と建物として買えるため、買い手の幅が広がります。代金の分け方は、地主と話し合って決めます。地主も底地を手放したいと考えていれば、話を切り出すきっかけになります。

3. 第三者に売る

不動産会社の仲介で、借地権付き建物として買主を探します。買主の候補が見つかったら、地主に譲渡の承諾を求めます。

  • 売買契約では、地主の承諾が得られなかったときの扱い(契約を白紙に戻すかどうかなど)を決めておく
  • 買主が建て替えを考えている場合は、建替えの承諾(第7章)もあわせて地主と話し合う
  • 地主が承諾しない場合は、借地非訟の申立てを検討する

4. 買取業者に売る

借地権など、権利関係が複雑な不動産を扱う買取業者に売る方法です。業者は、地主との交渉にかかる時間や、承諾が得られないリスクを見込んで価格を出します。1社だけで決めず、複数社の提示額と条件(承諾料の負担、残置物の扱い、引き渡しの時期)を並べて比べてください。

買取業者の免許番号と行政処分の履歴の調べ方、買取価格の目安の読み方は、空き家買取の仕組みと業者の選び方で整理しています。売り方の選び方について、最終的な判断は弁護士・不動産鑑定士などに相談してください。

相続した借地権は、売る前に何をすればいい?

この章のポイント

  • 相続人は、被相続人の権利義務を承継する(民法第896条)
  • 相続のあとで第三者に売るときは、地主の承諾が要る
  • 相続税では、借地権も財産として評価される

相続そのものと、相続後の売却は分けて考える

民法第896条は、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。」と定めています(被相続人の一身に専属したものを除く)。一方、民法第612条が承諾を求めているのは、賃借権の「譲り渡し」と「転貸」です。

弁護士法人みずほ中央法律事務所の解説(2013年11月28日掲載)では、相続による借地権の移転は借地権の譲渡にはならないため、地主の承諾は不要で、名義書換料を払う義務もないとしています。同じ解説では、相続後に地主の協力を得て契約書を作り直すときに、手間へのお礼として一定の金銭を払うことは一般にあり得るとしています。関係を保つための支払いと、法律上の義務は分けて考えてください。

ただし、相続したあとで第三者に売るのは「譲り渡し」に当たるため、地主の承諾が要ります。相続人以外の人に遺言で借地権を譲る場合の扱いは、弁護士に確かめてください。

相続人は被相続人の権利義務を承継する(民法第896条)。相続による借地権の移転は譲渡にならないため地主の承諾は不要とする弁護士の解説がある。相続したあとで第三者に売るのは譲り渡しに当たり、地主の承諾が要る(民法第612条)。

相続後、売る前にやること

  1. 誰が継ぐかを決める遺産分割で、借地権と建物を誰が継ぐかを決めます。共有にすると、売るときに共有者全員の足並みをそろえる必要が出てきます。
  2. 建物の相続登記をする法務省のQ&Aでは、「相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、相続登記をする必要があります」と説明されています。相続登記は2024年(令和6年)4月1日から義務になっています。
  3. 地主に相続を伝える地代の支払者や連絡先が変わることを伝えます。
  4. 地代を払い続ける売却が決まるまでの地代は、借地権を継いだ人が払います。
  5. 売り方を決めて地主に打診する第5章の4つの売り方から選び、地主に話を持ちかけます。

相続登記の期限や、売った年の確定申告までの流れは、相続した実家を売る流れと税金で詳しく整理しています。

相続税では、借地権も財産として評価される

国税庁 No.4611 によると、借地権の価額は、借地権の目的となっている宅地の自用地(更地)としての価額に借地権割合を掛けて求めます。定期借地権等は、原則として、借地権者に帰属する経済的利益と存続期間をもとに評価します(令和8年4月1日現在法令等)。

空き家のまま置いておくときの注意

旧借地法の借地権では、建物の朽廃による消滅は旧借地法の例によります(借地借家法附則第5条)。また、借地権を第三者に主張する根拠は、借地上の登記された建物です(同第10条第1項)。相続した家を空き家のまま長く置くことになりそうなら、早めに地主と今後の方針を話し合い、売却を含めて考えておきます。

家財の片付けの費用は遺品整理の費用相場、実家全体の進め方は実家じまいは何から始める?で整理しています。相続・登記・相続税について、最終的な判断は弁護士・司法書士・税理士などに相談してください。

買主が建て替えるときの承諾は、どう考える?

この章のポイント

  • 増改築を制限する特約があると、建替えにも地主の承諾が要る
  • 承諾が得られなければ、裁判所の許可を申し立てられる(第17条)
  • 更新後の再築許可(第18条)は平成4年8月以降の借地権だけ

借地上の家は築年数がたっていることがあり、買主が建て替えを前提に考える場合があります。建て替えの承諾が得られるか分からない借地は、買主から見ると判断しにくい物件です。

建替えに関わる裁判所の手続

  • 増改築を制限する借地条件がある場合に、協議が調わないときは、裁判所に地主の承諾に代わる許可を申し立てられます(借地借家法第17条第2項)
  • 建物の種類・構造・規模・用途を制限する借地条件の変更も、裁判所に申し立てられます(同条第1項)
  • 東京地方裁判所の説明では、増改築に借地条件の変更が必要な場合は、増改築許可の申立てとあわせて行う扱いとしています
  • 更新後に残りの期間を超えて使う建物を建てる場合の許可(同第18条第1項)は、平成4年8月1日以降に設定された借地権だけが対象です(東京地方裁判所の説明、借地借家法附則第11条)

建替えなどの承諾料として紹介されている数字

借地条件の変更(非堅固な建物から堅固な建物へ)

更地価格の10%相当額を一応の基準

東京都不動産鑑定士協会のQ&Aによる、東京地方裁判所本庁の扱いの説明。鑑定委員会の意見をもとに個別の事情を考えて決めるとしている

建替え・増改築の承諾料

更地価格の3%程度

弁護士法人高木・尾畑法律事務所の解説(2016年12月3日掲載)による目安。公的機関の数字ではない

どちらも法律で決まった額ではなく、地域や個別の事情で変わります。建替えの承諾や承諾料について、最終的な判断は弁護士・不動産鑑定士に相談してください。

売買契約の前に、何を確かめればいい?

この章のポイント

  • 権利の種類・期間・名義・地代を、書類で確かめる
  • 承諾の書面と、承諾料を誰が払うかを決める
  • 承諾が得られなかったときの契約の扱いを決めておく

地主・買主・きょうだいとの話し合いに使えるよう、確かめる項目をまとめました。

窓口で担当者と向き合って相談するイラスト

権利の種類と期間

  • 旧借地法か、普通借地権か、定期借地権か:土地賃貸借契約書(最初の契約日)
  • 賃借権か地上権か:土地の登記事項証明書
  • 残りの期間と、次の更新時期:契約書、更新時の合意書

名義と地主

  • 建物の相続登記が済んでいるか:建物の登記事項証明書、司法書士
  • 相続人の間で、誰が売主になるか合意しているか:遺産分割協議書
  • 地主の氏名・連絡先、地主側でも相続で代替わりしていないか:土地の登記事項証明書、地代の振込先
  • 現在の地代の額と、滞納がないか:振込記録、領収書

承諾と承諾料

  • 譲渡の承諾を書面でもらえるか:承諾書(文面は弁護士に確認)
  • 名義書換料の額と、売主・買主のどちらが払うか:売買契約書、不動産鑑定士
  • 増改築の制限があるか、建替えの承諾もあわせてもらえるか:契約書の特約

建物と契約条件

  • 建物の状態(傷み、空き家になっている期間):現地確認、写真
  • 建物を人に貸していないか:建物の賃貸借契約書
  • 承諾が得られなかった場合の売買契約の扱い:売買契約書の特約、弁護士
  • 借地非訟になった場合に、地主が買い取る可能性(介入権)を買主に伝えたか:弁護士

価格と税金

  • 借地権価格の根拠(路線価の借地権割合だけで判断していないか):不動産鑑定士、複数の不動産会社
  • 譲渡所得の見込みと確定申告の時期:税理士

契約書の条文や特約の書き方について、最終的な判断は弁護士・宅地建物取引士などに相談してください。

相談先はどこ?

相談したいこと相談先
地主との交渉、承諾書の文面、借地非訟の申立て弁護士
借地権価格・承諾料の評価不動産鑑定士
建物の相続登記司法書士、法務局
譲渡所得・相続税税理士、税務署
買主探し、買取の査定借地権の取引を扱う不動産会社・買取業者(複数社を比べる)
借地非訟の書式・手数料借地の所在地を管轄する地方裁判所

借地権の売却は、地主・買主・相続人の利害が重なります。この記事は一般的な説明です。個別の事情を踏まえた最終的な判断は、弁護士・不動産鑑定士・司法書士・税理士などに相談してください。

よくある質問

Q1. 借地権を地主に返すと、お金は受け取れますか?

期間の途中で合意して返す場合は、地主との話し合いで決まります。

存続期間が満了して契約が更新されない場合は、借地権者は地主に、建物などを時価で買い取るよう請求できます(借地借家法第13条第1項、建物買取請求権)。一般定期借地権などでは、この請求をしない特約を定めることができます(同第22条、第23条第1項)。

Q2. 定期借地権でも売れますか?

売ることはできますが、期間が終われば借地権は終わるため、残りの期間が短いほど買い手は考えにくくなります。土地の賃借権であれば、譲渡に地主の承諾が要る点は同じです(民法第612条)。

残りの期間や、更新しない特約の内容は、契約書(公正証書など)で確かめます。

Q3. 借地非訟は、弁護士に頼まずに自分で申し立てられますか?

本人が申し立てることはできます。代理人をつける場合は、法令で認められた代理人のほかは弁護士に限られます(借地借家法第44条第1項。簡易裁判所では、許可を得て弁護士でない者を手続代理人にできます)。

承諾料の主張や鑑定委員会への資料の提出が必要になるため、弁護士への相談を考えてください。申立書の書式は、東京地方裁判所や大阪地方裁判所のサイトに掲載されています。

Q4. 競売で借地上の建物を買った場合も、許可の申立てができますか?

できます。競売や公売で建物を取得した人は、地主の承諾に代わる許可を申し立てられます(借地借家法第20条第1項)。申立ては、建物の代金を支払った後2か月以内に限られます(同条第3項)。

出典

執筆・編集:しまい支度編集部(編集方針)

最終確認日:2026年10月27日